SSD側にヒートシンクが装着されていない理由
7月に詳細検証をお届けした
CFD「PG3VNF」シリーズは、PhisonのアドバイスとASRockの技術協力により製品化されている。NANDフラッシュには最大転送レート800MT/sの高速な東芝製3D TLC「BiCS4」を採用。さらにストレージ容量の1%に相当するDDR4 DRAMキャッシュを実装することで、常に安定した性能が発揮できる。
- 編集部
当初CFD「PG3VNF」シリーズは、ヒートシンク付きで発売されると聞いていました。しかし実際に製品版にヒートシンクは搭載されていません。この決断に至ったプロセスを教えてもらえますか。
- Stevens氏
確かに、製品化した最初の段階では、ヒートシンクが搭載されていました。その後、ASRockに検証してもらったところ、マザーボード標準のヒートシンクのほうが、より冷却効果が高いことが判明しました。さらに、マザーボード各社のラインナップを確認すると、チップセットとSSDを同時に冷却する、いわゆるボトムカバー一体型のヒートシンクを採用するモデルが非常に多い。よりたくさんのユーザーに利用頂くためにも、初めからヒートシンクを省略しようという結論に至りました。
- 編集部
ASRockとしてPCI-Express4.0(x4)対応SSD用の熱対策を具体的に教えてください。
- 原口氏
AMD X570チップセット世代になり、ヒートシンクの面積は大きくなりました。また、チップセット冷却用として小型のファンを搭載していますが、多くのモデルでSSDも同時に冷却できる構造になっています。
- 編集部
CFD「PG3VNF」シリーズのようにヒートシンクがないものから、CORSAIRやGIGABYTEのように標準でヒートシンクを搭載する製品もあります。いずれにせよASRockとしては、マザーボード側のヒートシンクを使う方がより冷えるという考えでしょうか。
- 原口氏
はい。ASRockで検証した限りではそのような結果です。もちろん、CFDから発売されている「PG3VNF」シリーズを搭載しても、サーマルスロットリングによって転送速度が落ちることはありません。
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AMD X570チップセット搭載マザーボードの多くは、ボトムカバー一体型のヒートシンクを採用。検証によりサーマルスロットリングを起こさない冷却効果が実証されている
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- 編集部
AMD X570チップセット搭載マザーボードのほとんどにファンが搭載されています。AMDとしてレギュレーションのようなものは存在するのでしょうか。
- 佐藤氏
必ず搭載してくださいというよりは「搭載を推奨します」という形になります。ファンを外した状態でテストしたところ、アイドルで60℃くらい。負荷をかけると高温になり、ベンチマークテストが完走しませんでした。設計上、ファン(およびその他の冷却機構)は必要になります。
新型の目標値はシーケンシャル読込/書込ともに7,000MB/secを目指す
- 編集部
NANDフラッシュについてお聞きします。今回は東芝製3D TLC「BiCS4」が搭載されています。他のメーカーやQLC NANDを採用する可能性はありますか。
- Stevens氏
コントローラ自体は対応していますので問題はありません。あとはコストや生産状況が現在の市場とマッチすれば、可能性は十分にあると思います。
- 編集部
現在は500GB(2019年8月発売予定)、1TB、2TBの3モデルですが、今後ラインナップが増える予定はありますか。
- Stevens氏
コントローラは最大8TBまでサポートしていますが、NANDフラッシュのコストを考慮すると製品化は現実的ではありません。4TBであれば、今後発売する可能性はあります。
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2TBモデルのNANDフラッシュは、容量512GBの東芝製3D TLC NAND「TABHG65AWV」が採用されている
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- 編集部
新型コントローラは開発しているのでしょうか。
- Stevens氏
はい、2種類のPCI-Express4.0(x4)対応コントローラを開発中です。1つは「PS5016-E16」の後継でハイエンドの「E18」。こちらのパフォーマンス目標値はシーケンシャル読込/書込ともに7,000MB/secです。もうひとつはエントリー向けの「E19T」(DRAMキャッシュなし)になります。こちらのパフォーマンス目標値はシーケンシャル読込5,000MB/sec、書込2,500MB/secになります。
- 編集部
製品化への課題などはありますか。
- Stevens氏
一番はコントローラとNANDフラッシュの熱問題です。これらがクリアーできれば、PCI-Express4.0(x4)の限界値にかなり近づくことが可能です。例えば「PS5016-E16」では、コントローラの表面に特殊なコーティングを施すことで、82℃以下までならば最大限のパフォーマンスが発揮できるように設計されています。あとは組み合わせるNANDフラッシュの耐熱温度が上がれば、よりパフォーマンスを発揮できるはずです。
もちろん、PCI-Express4.0(x4)の理論値である8,000MB/secにより近い数値が目標ですが、実現するにはマザーボード側の部材や品質も大きく関係してきます。ここでのボトルネックをいかに抑えるかというのも課題といえるでしょう。