エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1020
2021.07.12 更新
文:池西 樹(検証)/文・撮影:松枝 清顕(解説)
PCケースクリアランスとはモデル特有の見出しだろう。CPUクーラーの高さ制限は大型空冷クーラーに付きものだが「NH-P1」の場合、その体躯から思わぬところで物理的干渉の懸念がある。それがPCケースに搭載されるリアファンだ。
組み込み手順紹介の関係から、本稿ではマザーボードに「NH-P1」を搭載後、PCケースにマウントを行っている |
発売当初、秋葉原のPCパーツショップ冷却担当者から複数の声が挙がっていた事象で、ヒートシンクの後方への張り出しから、PCケースによってはリアファンとぶつかる事が確認されている。今回は搭載テストに以前詳細検証を行ったCooler Master「MasterBox MB511 ARGB」を使用。冷却ファンが増設できるリアパネルまでは段差が設けられているため問題はなかったが、特に拡張スロットとリアパネル(冷却ファン搭載面)が同一線上にあるPCケースは要注意といったところ。
Cooler Master「MasterBox MB511 ARGB」の場合、冷却ファン搭載面までの距離が実測で約45mmあるため、ヒートパイプの末端(キャップ)の飛び出しを考慮しても干渉は回避できそうだ |
Noctuaは「NH-P1」について、パッシブ運用の難しさをオープンにしている。製品サイトには本体のセットアップガイドに加え、CPU互換性リスト、推奨PCケースリストなど、複数の資料を用意。完全パッシブ運用には、CPUの特性を理解する事からはじまり、PCケース内のエアフローやマザーボードの選択、グラフィックスカードとの関係等を考慮。加えて本格運用前の”実験”が推奨され、当然ながらある程度のスキルが要求される。この一文で少しでも面倒だと感じたら「NH-P1」は選択せず、先日検証を行った「NH-U12S redux」等を検討すべきだろう。
それでも「NH-P1」が使いたいという場合、セミパッシブ運用という手がある。同時発売された「NF-A12x25LS-PWM」は、「NH-P1」付属の「mounting clips」を使うことで固定できる、120mm冷却ファン(25mm厚)だ。
Noctua「NF-A12x25LS-PWM」 市場想定売価税込4,378円(2021年6月発売) 製品情報(Noctua) |
デフォルトの回転数は450~1,200rpmの低速タイプで、騒音値は12.1dBAと極めて静音。付属の減速ケーブル「NA-RC8 Low-Noise Adaptor」(L.N.A)を使うと、最大回転を900rpmまで、騒音値を7.6dBAまでさらに落とす事ができる。当然風量も最大55.7m³/hから39.4 m³/hまで落ちてしまうものの、セットアップガイドにもセミパッシブ運用は有効である旨が記載されている。確かに僅かな風量でも”ゼロデシベル”よりは確実に有利だろう。ただしいくら有効な手段でも、どうやら搭載スペースの確保に苦慮しそうだ。
「NH-P1」には「NF-A12x25LS-PWM」が搭載できるよう、3箇所に「mounting clips」の固定穴が設けられている。まずはHole set 1~3まで3つのパターンをご覧頂こう。
Hole set 1 |
Hole set 2 |
Hole set 3 |
Hole set 1と3はサイドフローの向き違い、Hole set 2はトップフローだ。トップフローの場合、PCケースの高さ制限が懸念材料。「NH-P1は全高158mmで、ここに25mm厚の「NF-A12x25LS-PWM」を搭載すると、計算上183mm以上の有効スペースが必要になる。さらに空気の取り込みスペースを確保するとなれば、190mmは欲しい。
次にサイドフローの場合、Hole set 1はPCケースの天板までのスペースが必要になるし、Hole set 3にいたってはPCI-Expressスロットに覆い被さる位置になり、これもなかなか悩ましい。「NF-A12x25LS-PWM」によるセミパッシブ運用は有効だが、実際に導入する場合は周辺クリアランスの高いハードルをいかにクリアするかが課題になる。
上部排気で一見理想的なセミパッシブスタイル。余談だが12V CPU補助電源コネクタは「NH-P1」に完全に隠れてしまうため、先に接続しておく必要がある |
放熱フィンの方向に沿った”追加エアフロー”は、冷却能力向上がかなり期待できそう。ただし最上段にあるPCIe4.0(x16)スロットを完全に覆ってしまうため、グラフィックスカードが搭載できなくなる |