エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1467
2024.10.17 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
マニュアルの手順通りに進行すると、次はグラフィックスカードだ。おさらいすると、グラフィックスカードの有効スペースは最大長が326mmで、最大高が137mmまで。そして最大幅は搭載するCPUクーラーの全高が55mm以下なら63mmまで、全高が70mm以下なら48mmまで。これを把握した上で、構成パーツを決めて行く。返す返す、Era 2のシステム構成を決めるにあたり、詳細設計図たるマニュアルの存在は極めて重要であり、目を通さずに組み込む事は避けた方がいい。
なお本稿では事前に数値を確認した上で、今回は実測で長さ約243mm、幅約112mm、厚さ約40mm(2スロット占有デザイン)のGeForce RTX 4070 Founders Editionを用意した。
搭載方法はオーソドックスで、垂直スタイルの拡張スロット2段分にグラフィックスカードをネジ留めするだけ。ちなみにマニュアルには長尺グラフィックスカードを選択する場合、前方のカットスペースを有効に活用するよう記されている。なおGeForce RTX 4070 Founders Edition搭載後の残りスペースは、前方まで約85mmだった。
マザーボードトレイのポジションによるCPUクーラーとグラフィックスカードの関係については、マニュアルP.51に詳しい |
このタイミングで電源ユニットの出番になる。前作とは異なり、SFX-L/SFX規格のみとなったEra 2だが、搭載テストにはATX 3.0準拠のFSP「DAGGER PRO ATX3.0(PCIe5.0) 850W White」(型番:SDA2-850 Gen5.W)をチョイスした。なお外形寸法は幅125mm、奥行き100mm、高さ63.5mmのフルモジュラー式ホワイト筐体だ。
搭載手順はまずSFX PSU Bracketを外し、インチネジで電源ユニットをネジ留め。これを元の位置に戻せばいい。その際、内部中継用インレットケーブル(実測で約700mm)を接続。外装カバーを被せると操作ができないため、電源ユニット側のスイッチはONにしておく必要がある。
今回は機材手配の関係上、ホワイト筐体の電源ユニットを使用。実際には外装かパーで完全に隠れてしまうため、本来カラーチョイスはあまり気にすることはない |
DAGGER PRO ATX3.0( PCIe5.0) 850W Whiteはモジュラータイプだから、必要なコネクタは電源ユニット搭載後の接続で問題がない。また天板までのクリアランスは実測で約120mmで、接続したケーブルを比較的無造作に束ねたところで収納はできる。ただしトップパネルに冷却ファンまたはラジエーターを搭載する場合は、ケーブルが巻き込まれないように処理しよう。
モジュラーコネクタに接続したケーブルを、敢えて無造作に束ねた状態。内部容積が限られたミニ筐体ながら、上空の空間は比較的確保できている印象 |
右側面の開口部。電源ユニットがフロント寄りにマウントされている事が分かる |
左側面の開口部。主にグラフィックスカードが占有しているが、今回のシステム構成ならマザーボードトレイ左手エリアに1台だけ2.5インチSSDがマウントできる事が分かった |
最後にトップパネルの”使い方”についても触れておこう。マニュアルでも「応用編」といった扱いだが、120mm/140mmファンが2基、ラジエーターは240/280mmサイズが搭載できる、貴重な増設スペースだ。
ここに冷却性能を向上させる冷却ファンまたはラジエーターを増設するか否かはシステム次第だが、電源ユニットやマザーボードの上辺からトップパネルまでは比較的距離があるため、導入自体のハードルは決して高くない。仮に増設無しで運用すれば、詰め込み系PCケースの汚名も返上といったところ。
懸念事項を強いて言うなら、冷却ファンの電源ケーブルの接続だろう。Mini-ITX規格のマザーボードは、ATX規格ほど冷却ファンコネクタが無く、分岐ケーブル等の準備は必須。さらにコネクタ位置がボトムファンに近い下部になる場合が多く、接続のしにくさは如何ともしがたい。ここはミニPCの組み込みにまつわる醍醐味として、作業自体を楽しんでほしい。
Top Bracketもシャーシから完全に分離するため、広いスペースで増設作業ができる |
Mini-ITX規格のコンパクトな筐体は設置場所を選ばない一方、拡張性については時に妥協しなければならない。それでも未だに進化を続け、ともすればミドルタワーPCケースより複雑な構造は、一定数確実に存在するミニPCマニアたちの心を揺さぶり続けている。その最新モデルにあたるEra 2は、前作から大きく構造を変え、その血統たる面影は外観のみであり、全くの別モノだった。
組み込みセッションでも触れたが、Era 2の良さは要所のマウントブラケットが全てシャーシから切り離す事ができる点だ。完成に近付くにつれ空きスペースが占有されていく中、ネジ1本でブラケットが外せるセパレート式は、ユーザーの利便性を優先した設計である事を強く感じさせる。
また独立した両サイドパネルが一体型外装パネルに変更されたが、仮に右側面をいじる際、結局は背面にあたる左側面も開放状態であれば作業がしやすい。一体型であることの不便さは、思いのほか感じなかった事も付け加えておこう。さらに既存モデル「Terra」から受け継がれた可動式マザーボードトレイ(Movable Spine Configuration)も、Era 2の○な部分として忘れてはならない。
一方で×な部分は、Top Bracket(トップパネル)の着脱機構だ。スプリングを内蔵したスライドレバー式のロック機構はトップパネルが簡単に取り外せる最良の仕掛けだ。しかし構成パーツを搭載した状態からTop Bracketだけでうっかり持ち上げると、ロックが解除されてシャーシが作業台に落下したことが複数回あった。ダメージが無かったことは幸いだが、結構同じ目に遭ったユーザーは世界中にいるだろう。ここは自衛のため、早々にネジで固定しておくしかない。
協力:Fractal Design
株式会社アスク