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「Wavy II」を実際に動かしてみる 〜テストセッション〜

 いよいよ進化した「Wavy II」を実際に稼働させ、その実力に迫ってみたい。しかしながら、PCケースの実力を数値で表すその「定義」は難しい。それは言うまでも無く、ソフトウェアやPCゲームの動作は、組み込むシステムに依存するものであり、本来PCケースの実力とは言えない。
 そこで今回のテストでは、「Wavy II」に組み込む事ができる構成パーツをフル装備し、ケース内部温度計測、さらにCPUコア温度計測による挙動にスポットを当ててみたい。ケース内部とCPUコア温度を把握すれば、どこまで耐えうるのか、ある程度の「アタリ」を付ける事ができるだろう。自らパーツをチョイスする自作では、この「アタリ」が重要となってくる。

テスト機材構成
CPU Intel Core i5-2500K
(Sandy Bridge/LGA1155/3.30GHz/TDP95W)
CPUクーラー Intel純正クーラー
マザーボード ASRock「H67M-ITX」(Intel H67 Express)
グラフィックスカード SAPPHIRE「HD 4350 256MB DDR2 PCIE HDMI LP ファンレス」(型番:11142-08-20R)
メモリ GeIL「GEP38GB1750C9DC」(4GB×2)
SSD Mach Xtreme MX-DS TURBOシリーズ
「MXSSD3MDST-120G」(120GB)
HDD Western Digital「WD10EARS」
光学ドライブ 薄型DVDスーパーマルチドライブ(SATA)
その他 3.5インチ内蔵型カードリーダー
OS Windows 7 Ultimate SP1 64bit版

 上記テスト機材構成で「Wavy II」はフル装備状態となる。さすがにこの状態でのケース内部は、僅かな隙間も無い。特にケーブルの取り回しについては最大限の気遣いが必要で、場合によってはサイドパネルが閉まらない上、ケーブルがファンに巻き込まれてしまう。この手の組み込みに無理は禁物。使用用途を見定め、必要が無ければグラフィックスはオンボードを選択する等の割り切りが重要だ。

計測日
室内温度
湿度
室内騒音値
2011年9月19日
29.8℃
68%
29.1dBA

Wavy II
デジタル温度計をを用いてケース内部温度を計測。もちろんサイドパネルは閉じた状態でテストを行っている



■PCケース内部温度を計測してみる

 内部容積が小さいMini-ITXだけに、やはり動作中のケース内部温度上昇は気になるところ。そこでデジタル温度計を用意し、各シーン別の温度を計測してみることに。
 ここでは、内蔵グラフィック使用時と「一点突破」で活躍するファンレスグラフィックスカード、SAPPHIRE「HD 4350 256MB DDR2 PCIE HDMI LP ファンレス」(型番:11142-08-20R)を搭載させた場合の計2構成を用意。各々「アイドル時」、「OCCT高負荷時」、「BIOHAZARD5ベンチマーク」の3パターンでケース内部温度を探る。なおデジタル温度計のサーミスタは、CPUクーラーの右横付近に“空中設置”している。

テストリザルト

 まずは内蔵グラフィック使用時だが、最大で「OCCT高負荷時」の側面90mmファン停止時:43.1℃、最小で「アイドル時」の側面90mmファン回転時:33.1℃という結果だった。計測時の室内温度が29.8℃である事を考慮すると、十分及第点は与えられるだろう。次にグラフィックスカードを搭載させた場合の計測結果を見てみる。

テストリザルト

 内蔵グラフィック同様、最大は「OCCT高負荷時」(ファン停止)、最小は「アイドル時」(ファン回転時)となり、順当。温度はそれぞれ44.2℃(プラス1.1℃)、33.7℃(プラス0.6℃)で、若干の温度上昇となった。
 ファンレスグラフィックスカードの場合、ヒートシンクが負荷状態に比例して高温となるため、内部温度上昇を懸念したが、意外にも極端なプラス数値とはならなかった。この理由は側面90mmファンが効果的に作用しているだけでなく、開口部が広くなったサイドパネルの通気孔がよい仕事をしているのかもしれない。

 「一点突破」の使用実績から比較サンプルとしてRadoen HD 4350を搭載させたが、今回のテスト結果から、ケース内部の温度にはまだ余力があるようだ。となれば、上位GPUを搭載するグラフィックスカードを使う事で、これまでの概念であるMini-ITXフォームファクタの消極的使用用途(セカンドPC)から、ワンランク上のパーツ構成でシステムを構築する事ができるはずだ。

Wavy II
グラフィックスカードを搭載させてみると、さすがにケース内部は満員状態。ケーブルを追いやる場所も限られているため、ファンレスタイプをチョイスした方が無難。ちなみに有効拡張カードスペースは約170mm。当然ロープロファイル対応に限定される



■CPUコア温度を計測してみる

 次にCPUコア温度を計測してみたい。やはり注目は「Wavy II」から新たに標準搭載された側面90mm吸気ファンの存在だ。
 理論上、PCケース内部に強制的に外気を送り込む事で、トップおよびリアからの排熱速度が向上し、その恩恵を受けるはずだ。特に「Wavy II」のような内部容積の小さなPCケースであれば尚のこと、その効果はダイレクトに現れても不思議ではない。もしも結果が出なければ、そもそも「Wavy」から何も進化してないという、致命的なジャッジを下さなければならない。
 ここでは「一点突破 CPUクーラー編」同様、検証には「OCCT 3.1.0」でストレス状態を30分間作り出し、「SpeedFan 4.43」でCPUコア温度を計測。側面90mmファン稼働時/停止時の各状態、さらにCPU温度に影響を及ぼすであろう、グラフィックスカードの搭載時/非搭載時(オンボードグラフィック)をそれぞれ計測。なおテストはそれぞれの状態で各3回実行し、その平均値とした。
 
テストリザルト
Intel「Core i5-2500K」同梱リテールクーラー使用
※計測結果はコア1〜4の平均値

 CPUコア温度結果は、最大で「OCCT高負荷時」(ファン停止)の65℃、最小で「アイドル時」(ファン回転)の34.0℃となった。「一点突破」での過去計測結果を引き合いに出すと、室内温度27.2℃(6月22日)でアイドル時35.0℃、高負荷時69.0℃だったことから、今回の室内温度29.8℃(プラス2.6℃)を考慮すると、かなり優秀な成績と言える。ちなみに比較対象となる「一点突破」でのテストは、ベンチ台によるむき出し状態である事も付け加えておかなければならない。
 室内温度が約3℃上昇し、さらに狭い筐体内部にも関わらず、低い数値となった理由を考えると、やはり側面90mmファンの存在は大きい。このファンはCPUクーラーよりもやや上部左に位置し、至近距離からマザーボード部分に風を叩きつけるレイアウトだが、トップ部80mm排気ファンとの連携により、排熱スピードが想像以上に速い。熱だまりを作らない設計は見事に功を奏し、CPUクーラーの冷却能力を補助する役割を果たす側面90mmファンの存在は想像以上に大きい



■標準搭載ファンが増えた事で、動作音はアップしているのか

 テストセッション最後は、動作音をチェックしてみたい。「Wavy II」は、新たに2基のファンが追加されている事から、前作に比べ多少の騒音値上昇は覚悟しなければならないだろう。側面90mmおよび内部40mmがプラスされた事で、数値にどれほどの違いが出るのだろうか。

騒音値テスト
※フロントパネルから30cmの距離で計測

 騒音計によるテストの結果、「Wavy」の34.1dBAに対し、「Wavy II」は36.6dBAとなった。いずれもアイドル時の動作音だが、数値上では確かに2.5dBAの上昇が見られたものの、決してうるさいと感じる事はなかった。そもそも側面90mmファンは静音志向のモデルであり、HDD冷却用の40mmファンもケース内に収めると、「動作していないのではないか」と思えるレベル。160W電源ユニット搭載ファンも極めて静かな事から、特別な細工ナシで「Wavy II」は十分静かなPCケースと言える。



進化した「Wavy II」。最大の“キモ”は側面90mmファンの存在

Wavy II
Mini-ITXマニア垂涎のごちゃごちゃ感。この状態を「どうにかしてやろう」という自作魂を奮い起こす

 「Wavy」からマイナーチェンジを果たした「Wavy II」。今回は長期にわたりサンプルを借り受け、じっくりと細部をチェックする事ができた。
 その改良点ひとつひとつは、大きな設計変更する必要が無いレベルだけに、正直あまり期待していなかったが、実際にテストを行ってみると、エアフローの改善による冷却能力向上ぶりが光った。
 サイドパネル部にファンをひとつ増設しただけでCPUコア温度が明らかに低下した点は、まさに内部容積の限られたMini-ITXならではのダイレクト感と言える。恐らくミドルタワーPCケースではこれほどの明確な結果は出ず、論調も「恐らく効果はあるだろう」程度の歯切れの悪さが精一杯だろう。

 非力なmBGAプロセッサによるファイルサーバー用途止まりだったリテール市場向けMini-ITXは、ここ数年で激変した。コンシューマ向けチップセットを採用するソケットタイプのモデルが増え、拡張スロットの数さえ我慢すれば、決して非力ではないPCが「適正価格」で構築できる。実際にメインPCとして真っ先にMini-ITXをチョイスするユーザーは少ないだろう。ただし手軽にパーツ選びができるようになったミニPC市場には、まだまだ伸びしろがある。

 完成度が高く、実勢価格税込7,000円台で購入できるMini-ITXケースの新定番「Wavy II」。自作好きを自認するならば、ATXにも劣らない「自作ミニPC」に是非チャレンジして欲しい。

協力:株式会社エムヴィケー
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In Win
Wavy II
製品情報(株式会社エムヴィケー)
市場想定売価税込7,500円前後
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