2023.05.04 12:00 更新
2023.05.04 取材
決して広くはないお店に、同人ハードやレトロゲームなどがあふれるカオス空間。ここ家電のケンちゃんにて、“家電のHRDちゃん”こと店長の原田さんにディープなアレコレを語ってもらう「教えて!HRDさん」がスタート。今回は、同店のトレードマークでもある「同人ハード」がここまで増殖するに至ったワケを教えてもらうことに。
ご存知の方もいると思いますが、そもそも「同人ハード」を扱い始めたのは、自分が三月兎なる怪しげな雑貨屋で働いてた頃のこと。当時は店で同人誌や同人ゲームを売ってたので、同人のハードウェア=同人ハード・・・というシンプルな連想から、なんとなくそう呼び始めた感じです。
それに最初はいきなり同人ハードというわけじゃなく、すべてのキッカケはビットレ(ビット・トレード・ワン)が創業当時に売り出していた工作キットの「パドルコントローラ」でした。個人的に購入して出来のよさに感心。ウチ(三月兎)で売りませんか、と連絡をとったわけです。
すべてのキッカケになったのは、ビットレの「パドルコントローラ」だった(画像は進化版の「Horizontal Controller」) |
当時のビットレは直販以外で物を売ろうという発想がなかったらしく、だいぶ驚かれた記憶があります。そもそもあの頃は、工作キット自体を扱ってるお店が珍しかったですしね。
そしてその後に、ビットレがニコニコ超会議だったかに出展した時に紹介してもらったのが、多連装音源システム「G.I.M.I.C」を作っていたG.I.M.I.C Projectさん。そう、この「G.I.M.I.C」が最初に扱った同人ハードだったんですよ。なんとも懐かしい。
往年のPCやアーケードゲームの音源を“完璧に再現”できるFM音源ボードの「G.I.M.I.C」 |
驚きのヒットになった取り扱い初期の同人ハードといえば、PC-98の起動音を鳴らす「PiPo」。CPUの進化に合わせて高速化していったピポ音を再現できた |
ちなみにこの頃の同人ハードで一番印象に残っているのは、何と言っても“国民機起動音発生装置”こと「PiPo」ですね。PCの電源投入時にPC-98×1風の“ピポッ”という音を鳴らせるというアレで、入荷して一日もたずに完売。その後も再入荷する度に即完売と、とんでもない人気に驚かされました。同人ハードの可能性を実感しましたね。
もっとも三月兎時代はそれほどアイテム数は多くなくて、おそらく累計でも60種類くらい。まぁ当時働いてた三月兎の店舗も6年半くらい前に閉店(残った系列店も2017年に閉店)することになるわけですが、そのタイミングでスルッと現在の家電のケンちゃんに移ってきました。自分が窓口になっていた同人ハードも一緒にお引越し、今の店舗で扱いを再開したわけです。
家電のケンちゃん加入時に取り扱い再開第1弾として入荷したのは、三月兎時代から人気の同人ハードだった「GGLCD」。現在は最新版の「GGLCD rev3」を取り扱っている |
その記念すべき(?)取り扱い再開の第1弾が「GGLCD」。ゲームギアの液晶を換装するための改造基板で、今でもIPS液晶化できる最新版の取り扱いが続いています(現在は半導体不足の影響で長期品切れ中)。それからジワジワと取り扱うアイテムが増えていって、なんと今では(リビジョン違いやバリエーションを含めて)1,000種類近くの同人ハードを扱ってます。まさかこんな数になっているとは、自分でもビックリですよ。
原田さん加入時(左)と現在の家電のケンちゃん店舗(の一角) |
そもそもすぐ印刷できる同人誌と違って同人ハードは量産が難しいので、単価も高くなりがち。こんなに扱っていてなんですが、結構リスクが高い商品なわけですよ。でもアキバはかなりニッチなアイテムでも「こりゃ面白いな」と思ってくれる趣味人が結構いるので侮れない。今後もどしどし新しい同人ハードを仕入れていこうと思っています。
そんなわけで、面白いキットを作っている方はぜひ原田まで。どこかの店頭で売るのは初めて、という人がほとんどなので、気後れなしでOKです。そもそも同人ハードは、作り手さん自身が「こんなの欲しい」「こんなのあったら面白い」というところからスタートしてるので、大抵面白いに決まってるんすよね。
文: 編集部 絵踏 一
家電のケンちゃん: https://www.gdm.or.jp/shop/2017/0101/193926