エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.671
2018.07.19 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一
MISTEL「Barocco MD650L」 |
本題に入る前に、まずは2年前の思い出話から始めよう。キーボードのギーク集団によって立ち上げられたMISTELは、当時まだ設立間もないメーカーながら、そのデビューは鮮烈だった。実質的な第1弾製品として投入したモデルが、なんと超コンパクトな左右分離型メカニカルキーボードの「Barocco MD600」。「COMPUTEX TAIPEI 2016」における取材記事や詳細レビューには大きな反響があり、その後日本で発売された際も話題を集めたのは記憶に新しい。
超コンパクトな分離型キーボードという、これまでにないコンセプトがヒットした「Barocco MD600」。その後もRGB対応モデルをリリースするなど、分離型スタイルを得意とする尖ったメーカーというイメージが定着している |
そもそも一般的なキーボードは、入力時に身体に窮屈な姿勢を強いることから、手首や肩に負担がかかってしまう。長時間の作業では腱鞘炎も現実的な脅威になるところ、人間工学的な観点から生まれたのが、肩幅をくつろげたフリースタイルで入力できる左右分離型のキーボードだ。
主にプロフェッショナル向けに複数の製品がリリースされてきたが、従来のモデルはとかく場所をとるタイプが多かった。そこへHHKBクラスの超コンパクトサイズを採用する「Barocco」が、颯爽と登場。厳選された配列と極スリムな筐体設計、さらにフルピッチで入力できるメカニカルスイッチ搭載モデルというコンセプトには、多くのマニアが魅了された。
今回取り上げるのは、その「Barocco」シリーズの最新作として「COMPUTEX TAIPEI 2018」で発表された「Barocco MD650L」だ。
MISTELのDirector James Chang氏。コンパクトなフリースタイルの分離型という、異色のコンセプトへの追求は変わらず。はたして最新作はどのような性格をもったキーボードなのだろうか |
それではここからは、今回の主役である「Barocco MD650L」(以下「MD650L」)を概要からチェックしていこう。コンパクトな分離型というコンセプトこそ変わっていないものの、初代モデル(以下「MD600」)と見比べるまでもなく、極めて背が低いキーボードに仕上がっていることが分かる。分離型としては異例のスリムさに、さらに磨きがかかった印象だ。
その設計を支えているのは、搭載されているロープロファイル仕様のCHERRY MLスイッチだ。いわばCHERRY MXの“弟分”のような存在で、出荷開始に遡ること1996年という、低背メカニカルの元祖といえるスイッチ。そのおかげで全高はわずか16~19mmと、大幅な薄型化を達成している。
3月にサンプルが公開され、「COMPUTEX TAIPEI 2018」には完成版が持ち込まれた「MD650L」。CHERRY MLスイッチを搭載したことによる、大幅な薄型化が主要なトピックになっている |
また、フレーム設計も大幅変更。CNC切削加工のアルミニウム筐体が採用され、重量は485gから920gへと2倍近く増加した。コンパクトな分離型でなおかつ薄型化したにも関わらず、左右ユニットはそれぞれ十分な安定性を獲得している。
さらに配列も一部見直され、キーレイアウトは従来の62キーから70キーへと拡張。一部の機能キーに加え、方向キー(矢印キー)が独立実装された。ユーザーのリクエストに応えての変更ということだろう。
分離型のフリースタイルが基本形ながら、合体して一般的なキーボードのように使える点も「Barocco」シリーズの特徴。搭載機能を含め、根本のコンセプトは初代からそのまま受け継がれている |
ちなみに「MD600」では、自由自在なオンザフライのカスタマイズ機能が大きな特徴だったが、最新作の「MD650L」もこれを踏襲。左右ユニットそれぞれが単体で動作するほか、全キーを対象にしたキー割り当てやマクロ登録、配列切り替え機能を搭載している。もちろん設定はオンボードメモリに保存される仕組みだ。
そのほか、接続インターフェイスはUSBで、ポーリングレート1,000Hzをサポート。分離型とあって複数のケーブルが付属しているが、こちらは後ほど確認しよう。