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|「Nofan A40」実稼働による温度計測
組み込みを終えたところで、いよいよ実稼働によるテストを行ってみよう。しつこいようだが、「Nofan A40」最大の特徴は巨大ファンレスCPUクーラー「CR-100A」の存在。見た目のインパクトが大きいだけに、期待は高まるわけだが、通常使用にどれだけ耐えられるのか正直不安は残る。百聞は一見にしかず。とにかく電源を入れてみよう。
なお組み込み手順でご紹介した構成から、マザーボードを載せ替えている。その理由は「Nofan A40」ではやはり拡張スロットを使ってのグラフィック出力を使うよりも性能が向上されている内蔵グラフィックを利用したいと考えたからだ。さらに“Second PCI Slot”を使わなければならない制約と、ファンレスグラフィックスカードの発熱が、少なからずCPU冷却の妨げになる恐れも考慮したい。もちろんこれは任意で選択すれば良い事だが、エルミタ的にはIntel Z68 ExpressまたはAMD A75がオススメではないかと思う次第。
テスト機材構成 |
CPU |
Intel Core i5-2500K
(Sandy Bridge/LGA1155/3.30GHz/TDP95W) |
マザーボード |
GIGABYTE「GA-Z68XP-UD3」
(Intel Z68 Express/ATX/HDMI×1) |
メモリ |
OCZ「OCZ3P1333LV4GK」
(1333MHz/PC3-10666/CL 7-7-7-20/1.65V) |
グラフィック |
Intel HD Graphics 3000 |
SSD |
Patriot Torqx 2「PT264GS25SSDR」
(64GB/SATA2.0) |
光学ドライブ |
LG「GH24NS50」(DVDスーパーマルチドライブ) |
OS |
Windows 7 Ultimate 64bit |
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計測の方法は「エルミタ的一点突破 CPUクーラー編」に則り、高負荷状態を「OCCT 3.1.0」(30分)で、温度は「HWMonitor Pro 1.17」でモニタする。また「CR-100A」の温度計測は非接触型放射温度計AD-5611Aを使用した。なお計測を行った室内温度は26.6℃(湿度69%)だった。
|「CR-100A」/CPUコア/ケース内部温度
■CPUコア温度計測結果
CPUコア温度は最小値(アイドル時)がCore#1で42℃、最大値(高負荷時)がCore#2で71℃だった。エルミタ的「一点突破」でテストを行ったIntelリテールクーラー(Core i5-2500K)のテストでは最小値35.0℃、最大値69.0℃(室温27.2℃環境)だった事を考えると、アイドル時でやや高めとはいえ、高負荷時での数値は、どこにもファンが無い環境としては優秀だ。
ちなみにこのテスト後、さらに30分(計1時間)テストを継続してみたところ、これ以上数値は上がらず、安定状態で受熱と放熱が繰り返されていた。一般的な使い方であれば、十分に実用領域の能力である事がこれで証明されたことになる。
■「CR-100A」ポイント別温度計測結果
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「CR-100A」温度計測ポイント
(1)受熱ベース上、(2)〜(5)アイスパイプ各部、(6)〜(9)プレート部 |
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1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
アイドル時 |
33.0 |
30.4 |
30.9 |
31.4 |
31.2 |
32.8 |
34.3 |
34.1 |
33.4 |
高負荷時 |
41.9 |
34.6 |
37.6 |
35.2 |
32.3 |
38.7 |
39.8 |
38.6 |
40.9 |
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「CR-100A」のポイント別温度計測を行った結果、高負荷状態になるにつれ、全体的に順当な温度上昇が見られた。
アイドル時での最大温度は(7)の34.3℃、高負荷時では(9)の40.9℃となった。(6)から(9)までの4ヶ所は支柱の役割を果たすプレート部となるが、CPUコアに近いだけに、360度に張り巡らされたアイスパイプよりも高温になる。ただし言えるのは、この部分の温度が上昇しなければアイスパイプに熱が伝わらず、十分にCPUコアの熱を吸収してくれない。つまりファンレス動作させるための「要」となるのが、この(6)〜(9)のパーツという事が言え、受熱ベース部と同レベルで重要な役割が果たされている。
■ケース内温度計測結果
続いてPC動作中のケース内部温度に注目してみたい。巨大ファンレスCPUクーラー「CR-100A」は、CPUからの熱を一手に引き受け、CPUクーラーのファンはもとより、ケースファンからのアシストは一切なし。もくもくと受熱を続ける。言うまでも無く、これにより無音状態を作り出すワケだが、その代償として、PCケース内部の温度上昇が気になるところだ。
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PCケース内温度計測にはサイズの「どこでも温度計2」を使用。(画像はアイドル時)なおセンサーはケースボトム部から5cmの高さに設置している |
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実際に「OCCT 3.1.0」による高負荷状態を30分続けたところ、無数に通気孔が空けられたPCケースの両側面やトップ部に手のひらをかざすと、「CR-100A」が発熱している事がハッキリとわかる。これはポイント別温度計測でも40℃まで上昇した部位があるだけに、当然と言えば当然だ。
そこで高負荷状態30分経過時点でのPCケース内温度をモニタしたところ、30.5℃を示した。起動後30分放置状態(アイドル時)での温度は28.8℃だった事から、プラス1.7℃の上昇となる。計測日の室内温度26.6℃(湿度69%)と比べると、プラス3.9℃。この数値をどう見るか、またはシステム全体にどのような影響を及ぼすかは定かではない。
今回は内蔵グラフィックでの動作だが、ここに無音PCを構築すべく、ファンレスグラフィックスカードを搭載させた場合、GPUの熱と相まって、さらなる温度上昇は覚悟しなければならない。「CR-100A」および、「Nofan A40」の性格を考えた場合、個人的にはあまり無理をさせたくない。ある程度のマージンは、パーツのチョイスでカバーしておいた方が良いだろう。
■本来無意味ながら騒音値を計測してみた
無音システムを組み込んだため、従来行っている騒音値テストは無意味なはず。とは言うものの、文章で“音の具合” をお伝えする事はできないため、敢えて騒音計を用いた動作音テストを実行した。
室内騒音値 |
動作時騒音値 |
29.8dBA |
29.6〜30.8dBA |
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その結果、室内騒音値29.8dBA環境で、動作時は29.6〜30.8dBAだった。物理的に駆動しているパーツが無いためにまさに無意味な測定だが、あらためて数値を見比べてみると動作音に敏感なユーザーにとっては、非常に魅力的な結果と言えるだろう。
■NOFAN的レコメンドシステム
テストセッション最後に、NOFANが一例として勧めるレコメンドシステムについて触れておこう。
NOFANのウェブサイトには、「Nofan A40」(ATX)および「Nofan A43」(MicroATX)に適したマザーボードリストが掲載されている。Intel系ではLGA1155、LGA1156、AMD系ではAM2からAM3+、さらにFM1まで、比較的モデル名のアップデートも早く、最新モデルの名前も掲載されていた。各々の型番については製品サイトから確認して頂くとして、ここでは同梱マニュアルにプリントされた、NOFANレコメンドシステムについて目を通しておこう。
・Intel System
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メーカー名 |
モデル型番 |
CPU |
Intel |
Core i5-661(Clarkdale) |
CPU Cooler |
NOFAN |
CR-100A |
ケース |
NOFAN |
CS-30&CS-60 |
M/B |
MSI |
H55-GD65(ATX)/H55M-E33(MicroATX) |
VGA |
SAPPHIRE |
Radeon HD 5450 HM D2 512MB LP |
PSU |
NOFAN |
P-400A |
SSD |
SAMSUNG |
S-470 series 2.5インチ64GB |
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・AMD System
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メーカー名 |
モデル型番 |
CPU |
AMD |
Phenom II×6 1055T(Thuban 95W) |
CPU Cooler |
NOFAN |
CR-100A |
ケース |
NOFAN |
CS-30&CS-60 |
M/B |
ASUSTeK |
M4A88TD-V EVO/USB3 |
VGA |
SAPPHIRE |
Radeon HD 5450 HM D2 512MB LP |
PSU |
NOFAN |
P-400A |
SSD |
SAMSUNG |
S-470 series 2.5インチ64GB |
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これらのレコメンドシステムは、評価機同梱のマニュアル(P.16)に掲載されているもので、注意書きとしてアップデートされた情報はウェブサイトを確認する事とされている。
あくまで現時点での構成だが、IntelおよびAMDの推奨CPUおよびグラフィックスカード(SAPPHIREのRadeon HD 5450ロープロファイルモデル)を見ると、このシステムに対するNOFANのメッセージを読み取ることができる。つまり「あまり無茶をしてはいけない」という事だろう。
テストを行った結果、Intel Core i5-2500K(定格動作)でストレスをかけてもシステムが落ちるといったトラブルは1度も起きていない。さらにベンチマークテストだけでは分かりにくい挙動に関しても、まったくおかしな点は感じられなかった。
|総括 チャレンジの無い「無音PC」構築を実現したNOFAN
筆者自身、過去に幾度となくファンレスPC構築にチャレンジした事がある。Yonahに大型ヒートシンクを搭載させ、ケースファンで内部のエアフローを確保しての“似非ファンレスPC”だったが、比較的軽めなアプリケーションを難なくこなす様は、自作PCならではの達成感を味わう事ができた。
時代が変わり、今回「Nofan A40」で“完全無音PC”をテストしたが、前述のような達成感を感じる事は無かった。その理由は巨大ファンレスCPUクーラー「CR-100A」が無理をしているように感じる事なく、文字通りクールに冷却を続け、言うならば汗ひとつかかずに仕事をこなすからだろう。直径222mmの大迫力も安心感を高める大きな要因となっているのは確かだ。動作中に不安感を抱くような事はなかった。
そもそもNOFANが用意した「Nofan A40」、「Nofan A43」は、ファンを一切使用しない無音PCを目的としたモデルだ。つまりファンレスで動く事は自然であり、驚くべき事ではないということ。このセットにチャレンジという言葉は似合わない。
敢えてメーカーが嫌がるであろう値踏みをしてみると、PCケース「CS-30」が6,000円、CPUクーラー「CR-100A」と電源ユニット「P-400A」が15,000円ずつと考えれば、売価の36,000円は決して高い買い物ではない。なぜならばファンレス「無音」の実証がはじめから付けられているからだ。
「Nofan A40」で動作する無音PCでこのテキストを書いているが、本当に動作しているのだろうか?と、ついつい目が行ってしまう。本来動作音がして当然のPC。不気味なほどに音を出さない「Nofan A40」は、ほとんどの自作ユーザーがこれまでに体験したことの無い世界を味わう事ができる、現行モデルでは“唯一無二”の存在と言える。 |
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機材協力:株式会社アスク
© GDM Corporation All Rights Reserved. |
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対応フォームファクタ
ATX/MicroATX
採用ケース
CS-30
D415×W172×H380mm/2.7kg
CPUクーラー(ファンレス)
CR-100A
電源ユニット(ファンレス)
P-400A(400W)
発売日
2011年7月30日出荷開始予定
市場想定売価
税込36,000円
製品情報(株式会社アスク)
製品情報(NOFAN) |
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