2018.02.26 00:00 更新
2018.02.26 取材
ガジェットライフにどっぷりハマる、ギークな野郎は毎日何を考えている?「ギークの殿堂」でお馴染みなアノ人が、スマホやデバイスのアレコレから、業界事情やオトクな契約プランに至るまでを徒然に語る。今回のテーマは、「iPhone X」の登場で一躍スタンダードになるかと思われたスマホの顔認証について。
昨年に「iPhone X」が発表された時は、「お、次世代の生体認証は顔認証になるのかぁ」と思っていた。Appleのことだから想像を絶する試行錯誤を繰り返した結果なのだろうし、もちろん他社の追随を許さない精度を持っているに違いない。そんな風に期待しつつ、発売時は銀座のApple Storeに並ぶことに。
超絶なドヤ顔で「iPhone X」を発表する、Appleのティム・クックCEO。顔認証の「Face ID」は、新機軸が多数盛り込まれた「iPhone X」の目玉のひとつだった |
ところがいざゲットしてみると、認証に手こずることが何度もあった。起きている時間帯はいいけれど、寝ながら近くにあるiPhoneを取りたい場合などは、やはり指紋認証の方が便利。こう感じるのは私だけではないだろう。
例えば大物Youtuberであるヒカキン氏は「ばれないようにマスクをして外出したいのに、顔認証では認証できない」という理由もあって、「iPhone X」の使用を中止すると同氏の動画で語っていた。なるほど有名人ならではの悩みというワケだ。
では、「iPhone X」以外の顔認証はどうなのか。端末を買いまくってきた私の経験談を書いていきたい。
「iPhone X」がどうやら顔認証を採用するらしいという噂が流れていた2017年当時、「Galaxy S8」や「Galaxy Note8」、「LG V30+」、「OnePlus 5T」などなど、様々なメーカーが競うようにフラッグシップモデルに顔認証を搭載してきた。
「Galaxy S8/S8+」も先駆けて顔認証に対応した端末のひとつ | 「LG V30+」は顔認証に加えて、音声認証にもチャレンジしたけれど・・・ |
私ははよく端末を買うので一通り体験したところ、やはり「iPhone X」と同様、認証しない時はなぜかうまくいかないし、(指紋が使えない場合は)諦めてパスワードやピンコード入力でロックを解除することもあった。
ちなみに「LG V30+」はau版に限り音声認証という機能もあったものの、セキュリティが保証できないという注意書きがあったため、安心して使うことはできない。
もっとも、上述したAndroidは全て従来の指紋認証を残しているため、顔認証が合わない人は今まで通り指紋の方を使えばいい。「Galaxy S8」や「Galaxy Note8」で「指紋認証の位置が悪い」と不評だったSamsungは、「Galaxy A8(2018)」において、指紋認証の位置を背面中央という分かりやすい場所に持ってきた。リーク情報によると、近く発表されると噂の「Galaxy S9」でもほぼ同じ位置になっているらしい。
そもそもメーカー的にも、認証の精度に限界があるのなら、膨大なコストを費やして顔認証を続ける必要もない気がする。
「Galaxy S8」などで評判が悪かった指紋認証センサーは、「Galaxy A8(2018)」では分かりやすい位置に移動されている | iPhoneの場合、フラッグシップモデルの「iPhone X」では顔認証以外の生体認証を廃止してしまった |
ところがAppleの場合はどうかというと・・・勢いあまって「iPhone X」で指紋認証を廃止してしまった。もとよりAppleは自社の失敗をめったに認めることはないし、さらにティム・クックCEOも発表時に「これから10年戦えるiPhoneだ」と胸を張っていた。
ひょっとすると2年周期の大幅なモデルチェンジの際に、しれっと復活することはあるかもしれない。ただ2019年モデルで早々に指紋に回帰するなんてことがあるだろうか。結果的に、満を持して採用した顔認証が失敗だったと認めることになるからだ。
ところで顔認証が登場する前に、(とある事情で)幻となった「Galaxy Note7」が搭載していた虹彩認証というものがある。顔よりも狭い範囲で「両目」を使った生体認証を行うというもので、顔認証と違い精度はかなり素晴らしかった。ただし、素早さでは指紋認証にまったく敵わない。
少し早く登場した「Lumia 950 XL」でも試したけれど、速度面の不満は同じ。精度も申し分なかったが、むしろこちらはセンサーが少し眩しかったりもした。
精度は段違いに素晴らしかった、「Galaxy Note7」の虹彩認証。ただし指紋に比べ、認証速度が劣る点がネックだ | 「Lumia 950 XL」は、虹彩認証による「Windows Hello」に対応していた |
スマホで使われている、指・虹彩・顔という3つの生体認証。それぞれの強みはあるけれど、あらゆる状況での使い勝手を考えれば、現在最も使いやすいのは指紋認証・・・という意見で一致するのではないだろうか。
念のためもあってか従来の指紋認証を残したAndroid勢は、引き続き指紋認証を主流の生体認証として搭載してくるはず。やや勇み足にも思えるAppleは、モデルチェンジ前の今年はどう出てくるのか。技術的なブレイクスルーはあるのか?「販売不振は想定内」と余裕の表情だが、はたして。
Appleの本格採用で、一気に採用が進むかと思われた顔認証。現在はまだ精度に難あり、今年のiPhoneではどうなるかしら? |
文: 太田 文浩(イオシス アキバ中央通店)