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|「SST-FT03」の内部とCPUの温度テスト
冒頭、フルタワークラスのPCケース「RAVEN 2」との大きさ比較を行ったが、それを見ても分かるように「SST-FT03」の内部容積はMicroATXのそれで、決して大容量とは言えない。コンパクト設計による設置場所を選ばない利点とは引き替えに、稼働時の内部温度上昇はやはり気になる点と言えるだろう。3基の冷却ファンを装備したとは言え、やはりケース内温度はそれなりに上昇しているのではないだろうか。
そこでここからは実際にシステムを稼働させた場合のCPU温度とケース内温度を計測してみたい。
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・本体底面だけでなく、左側面にも吸気孔が設けられた「SST-FT03」。煙突効果も手伝ってトップ部から一気に熱を排出させる構造はケース内部の温度上昇を抑えるには十分と言えるだろうか |
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■CPU温度計測結果(アイドル - 高負荷20分)
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【CPU1】 |
【CPU2】 |
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【CPU3】 |
【CPU4】 |
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本来であればグラフィックスカードの高負荷状態でのケース内部温度も計測したかったが、今回のテストはかなりタイトなスケジュールの中で行っているため、十分なテストを行う事ができない点はご了承頂きたい。
さて、「OCCT 3.1.0」でのCPU温度推移を見ると、室内温度18.2℃の状態でアイドル時がCPU1で約30℃、高負荷時で約67℃、CPU2でそれぞれ約30℃/約67℃、CPU3で約29℃/63℃、CPU4で約28℃/66℃となり、特別にCPU温度が上昇する気配は無かった。
さらにケース内部温度では、アイドル時が22.2℃近辺となり、「OCCT 3.1.0」での高負荷時1時間経過時点では最大で23.9℃まで上昇した。なお計測にはデジタル温度計を用い、サーミスタはケース内部のほぼ中心としているが、120mmファン3基が功を奏し、効率良くエアフローが常に内部を駆け抜けるという状況から比較的安定した状態が保たれている事が分かった。室内温度が高くなる真夏ではまた違った性格となる可能性はあるものの、現状ATXミドルタワークラスと遜色ない結果には十分合格点が与えられる。
|「SST-FT03」の騒音値テスト
「SST-FT03」はそのスタイルから、机上に設置するパターンよりも机の横または足下に据え置く使い方が想定される。正圧設計を採用し、PCケース上部に排出させるその構造から排気音は少々気になるポイントと言えるだろう。ここでは実際にPCを稼働し、その気になる騒音値を計測してみたい。なおテストは、(1)床にベタ置きの場合と、(2)机上置きの2パターンとし、(1)ではトップパネルから30cmの位置、(2)ではフロントパネルから30cmの位置で計測を行った。
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・本体外周はフラットなため、部屋のコーナーにも置く事ができる「SST-FT03」。せっかく外観が美しいモデルだけに、机上に設置したいユーザーも少なくないだろう |
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まず実際に稼働させてみた感想を言うならば、超静音ではないものの、耳障りではないといったところ。しかしここでお断りしておかなければならないのは、騒音値のほとんどがグラフィックスカードのVGAクーラーから発せられているという点だ。よってこの数値はPCケース本来の実力ではない。
グラフィックスカードのファンから発せられる駆動音はだいぶ低くなっているとは言え、完成したPCの性格を変えてしまうほどの影響力は未だにある。これについて多くのユーザーは妥協しているはずだが、これを回避するには回転数を必要としないスペックのGPUを選ぶか、リファレンス以外のVGAクーラー搭載モデルを用意するしかない。
「SST-FT03」の名誉のために補足しておくと、ファン単体(デフォルトの3基)のみを稼働させてみた場合、フロント部で32.9dBA、トップ部で35.1dBAまで落ち、十分静音PCが構築できるだけの要素は備えていた。決して密閉率が高いPCケースではないが、実用レベルは十分にクリアしている事は確かだ。
|総評
|現在の市場を把握したSilverStoneの強さ
「SST-FT03」は正にコンセプトの勝利の一言に尽きる。実は12月28日より店頭販売が開始されているのだが(ブラックモデルのみ。シルバーは1月中旬発売予定)、エルミタ取材班によると、売れ行きは非常に好調らしく、年内在庫は持たないのではないか?という販売店の声もあると言う。
2010年のSilverStoneは、昨年の「RAVEN 2」からの好調を維持し、非常に良い成績を残した。この連続安打の秘訣はどこにあるのだろう。
それは恐らく「こうすれば売れない」という、ある意味での“コツ”を知り、「こうすれば売れる」を的確に認識しているからではないだろうか。
市場は生き物であり、常に動く現状を把握するのは非常に難しい。しかしこれをリサーチするマーケティングと、吸い上げられた市場のリクエストを元にプロダクトチームが企画立案し、そして製品化させ、セールスに委ねるという当たり前の流れがとてもスムーズに進行しているように感じられる。
特に「SST-FT03」のような独創性の高い製品を作るにはそれなりのリスクを背負う覚悟が必要だが(実際にかなりのリスクのはずだ)、完成した製品にネガティブな苦労の跡が窺えないのは、SilverStoneの勢いがそうさせているからに他ならない。
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・SilverStoneのレベルの高さが感じられた「SST-FT03」 |
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大枚をはたいて製品を購入するユーザーからすれば「ここが苦労しました」などと言うメーカーのコメントは必要としない。「SST-FT03」のように、いとも簡単に「はい、できました」と言わんばかりの風格こそが、注目と安心感、そして市場の支持を集めるのだろう。
2010年最後の「撮って出し」は、非常に完成度の高い製品で締めくくることができた。目前に迫った2011年もSilverStone製品には注目して行きたい。 |
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