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エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.72
SilverStoneの最高峰
TEMJIN「SST-TJ11B-W」検証
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2011年2月21日 13:24
TEXT:GDM編集部 松枝 清顕 |
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今回の「エルミタ的速攻撮って出しレビュー」は、SilverStoneブランドの最上位PCケースとなるTEMJINシリーズ「SST-TJ11B-W」をチョイスした。
TEMJINと言えば、長年SilverStoneブランドのフラッグシップモデルとして君臨し続ける同社の看板モデルだ。市場想定売価税込6万円台は現在の自作市場では希有な存在とも言える。さらに同社には完成度の高い「RAVENシリーズ」がある中、2011年国内市場第1弾として投入したTEMJINシリーズ最新作の出来映えそして意義を検証してみたい。 |
|頑なに作り続ける「TEMJINシリーズ」の最新作
「TEMJINシリーズ」最新作「SST-TJ11B-W」が2011年1月にリリースされた。このモデルは昨年の「CPMPUTEX TAIPEI 2010」でお披露目され、それから約半年を経て市場に投入された事になる。また「TEMJINシリーズ」としては約3年振りのフルモデルチェンジ(マイナーチェンジモデルは複数存在)で、まさに満を持してという印象が強い。
正直に言えば、爆発的ヒット作となった「RAVENシリーズ」がデビューした事で、必然的に「TEMJINシリーズ」のフラッグシップとしての地位は明け渡されたかに思えた。そう感じるのは無理もなく、「RAVENシリーズ」の完成度は非常に高く、特にエルミタでもテストを行った二代目「RAVEN2」は、ほぼ改良するところが見当たらないほど熟成されている。これをもって、SilverStoneのフラッグシップモデルと言い切っても違和感を覚える人は恐らくいないだろう。しかし意外にもSilverStoneは頑なに「TEMJINシリーズ」を開発し続けていた。
ここでSilverStoneフラッグシップPCケースの称号「TEMJINシリーズ」の歴史を紐解いておく。
「TEMJIN」の名が初めて国内市場に登場したのは、今から7年以上前の2003年10月のこと。秋葉原のPCパーツショップにプロトタイプ「SST-TJ01」の展示が開始され、同年12月に販売が開始されたところから、今日までの「TEMJINシリーズ」の歴史は始まる。
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シリーズ名(モデル型番) |
発売時期 |
実勢価格 |
TJ11
(SST-TJ11B-W) |
2011年1月 |
64,800円 |
TJ10
(SST-TJ10S) |
2007年10月 |
約46,000円 |
TJ09
(SST-TJ09S/B) |
2006年11月 |
約37,000円 |
TJ08(MicroATX)
(SST-TJ08S/B) |
2006年3月 |
約14,000円 |
TJ07
(SST-TJ07S/B) |
2006年1月 |
約42,000円 |
※TJ06
(SST-TJ06-S/B) |
2004年9月 |
約18,000円 |
TJ05
(SST-TJ05S/B) |
2004年8月 |
約18,000円〜23,000円 |
※TJ04
(SST-TJ04 GLACIER) |
2004年2月 |
約13,000円 |
※TJ03
(SST-TJ03S/B) |
2004年1月 |
約36,000円 |
※TJ02
(SST-TJ02 GLACIER) |
2004年2月 |
約15,000円 |
※TJ01
(SST-TJ01S/B) |
2003年12月 |
約14,000円 |
※SilverStoneWebからは既に削除済み |
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今回リリースされた「SST-TJ11B-W」まで11代目を数えるわけだが(その間バリエーションモデルは多数存在する)、MicroATXモデルとして登場した「SST-TJ08S/B」を除くと、6代目「SST-TJ06-S/B」までは売価1万円台のモデルが5機種となり、必ずしも「TEMJIN」はフラッグシップモデルとして投入されていなかった事が分かる。
また筆者の認識が正しければ、今日の「TEMJINシリーズ」が確立されたのは2006年1月にリリースされた「SST-TJ07S/B」からであり、ここから「TEMJINシリーズ」に対するSilverStoneの明確な位置付けが意識され始めたように思う。
|新型「TEMJIN」は、「SST-TJ07」の純粋後継モデル?
現在の「TEMJINシリーズ」としての原点が「SST-ST07S/B」と仮説を打ち立てるならば、新型「SST-TJ11B-W」は純粋なる“原点回帰モデル”と言える。その理由はフレーム構造にある。
7代目「TEMJIN」がリリースされたのは2006年1月で、11代目となる今回の新製品までの5年間に3機種の「TEMJIN」が登場している。しかしその3機種のフレームは一体成型フレームの採用が見送られていた。
ここからは勝手な想像となるが、SilverStoneは一体成型フレーム構造を一旦諦めたのだろう。
一体成型フレームは通常のPCケース構造よりも高い技術を必要とする。そのポイントとなるのがフロント両サイドフレームの曲げ部分だ。
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一体成型フレームがよくわかるフロント両サイドの湾曲部 |
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一般的PCケースではフロントパネル、トップパネル、ボトムパネルはそれぞれ1枚板で構成され、それぞれがフレームにリベット固定(またはネジ留め)されている。極端に言えば、木で枠を作り、その四方に板を釘で打ち付けて行く事は誰でもできるだろう。しかし一体成型フレームは“コの字”形状のフレームに角丸サイドパネルをはめ込む必要がある。
フロントパネルについてはさほど問題ではないものの、工作精度を高めなければ、サイドパネルの上下角丸部とフレームの間には隙間ができてしまう。簡単そうに見える部分だが実は難易度が高く、フレームに関わる構成部材を固定させて行く事で、歪みが生じる可能性があり、すべての精度が出せなければこれは完成しないのだ。
推測だが「SST-TJ07S/B」で一旦は採用したものの、“面倒な”一体成型フレームを8代目〜10代目で回避し、改良と精度を高めた上で今回の「SST-TJ11B-W」を投入してきたのではないだろうか。とは言え、無理にこの方法を採用する必要はないはずの一体成型フレームを復活させたのは、「TEMJINシリーズ」こそがSilverStoneブランドのフラッグシップである事へのこだわりの表れといえる部分かもしれない。
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一体成型フレームとサイドパネルの角丸部分の隙間をなくすためには、構成部品すべての工作精度の高さを必要とする。純粋なるフラッグシップPCケースを作りたかったSilverStoneはこの部分にこだわったのではないかと推測される |
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7代目「TEMJIN」となる「SST-TJ07B」(画像左)と11代目「SST-TJ11B-W」にはフレーム構造に共通点を見出すことができる |
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|「SST-TJ11B-W」外観チェック
「SST-TJ11B-W」の重量は17.4kg。XL-ATXにも対応する事から言うに及ばず、かなりの大型・重量級PCケースの部類だ。
本体は4.5/5mm厚の二重構造アルミニウム一体成型フレームを採用し、高い剛性を特徴とする。さらにボディも2mm厚のアルミニウムがふんだんに使われており、アルミニウム筐体=軽量という概念は完全に忘れた方がよい。
高剛性の利点はもちろん駆動振動からくる共振が軽減され、通常使用における「ヤレ」など経年変化の恐れはただの老婆心とばかりにビクともしない力強さを持っている。
ここからは「SST-TJ11B-W」の外観から順に、数多くの見所をご紹介していきたい。
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奥行き657mmのトップ部はフロントが曲線、リアが直角にデザインされ、7代目「SST-TJ07B」の面影が残る |
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トップパネルを固定するジェラコンキャッチの“オス”は全4カ所 |
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Powerスイッチ周りにはBlueLEDが内蔵されている。なお利便性を考慮し、トップ部にもPowerスイッチが用意されているのは非常に珍しい |
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通気孔を兼ねたトップパネルはジェラコンキャッチによりワンタッチで着脱が可能。マザーボード直角回転レイアウトにより、外部ケーブルはすべてこの面から出てくる事になるため、トップパネル後方にはケーブルが抜ける隙間が広めにとられている |
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トップパネルを側面からよく見ると、こんなところにもハニカム構造の通気孔が装備されていた |
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空の状態でもかなり重いため、腰などを痛めないよう移動時はウエイトリフティングさながら、「深呼吸と気合いの準備」をお忘れ無く |
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|トップカバーとコネクタスペースの留意ポイント
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トップカバーとバックパネルとの有効スペースは70mm |
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「SST-TJ11B-W」は、マザーボード直角回転レイアウトを採用するため、外部端子(背面I/O)はトップ面に位置する。つまりモニタケーブルや入力デバイスのケーブルは“上から突き刺す”ことになり、着脱式トップカバーがそれを隠す役割を果たす。ここで注意しなければならないのが、コネクタとケーブルとトップカバーの物理的干渉だ。
以前テストした「RAVEN2」でも指摘したが、例えばDVI to D-Sub変換アダプタを使用した場合、接続したコネクタ自体がかなりスペースを取ることで、トップカバーを閉じることができない事態に陥った。仕様上ある程度妥協しなければならないが、「SST-TJ11B-W」ではこのスペースを70mmとし、この範囲内に収める事ができない場合は、ケーブルタイプのDVI to VGAアダプタの使用が推奨されている。メインモニタがDVI、セカンダリがD-Subというユーザーもまだまだ多い事だろう。もし該当する恐れがある場合は、事前に回避策を用意しておきたい。 |
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