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|「KUHLER-BOX」冷却能力(温度)、騒音値、回転数テスト
いよいよお待ちかね、「KUHLER-BOX」の能力テストを行ってみよう。Antecが満を持して本格参入したCPUクーラーは、世界的インパクトを放ったPCケースのような高いポテンシャルを持ち合わせているのだろうか。
なお今回は冷房OFFの室内温度28.6℃という筆者も過酷な環境で計測を行っているため、これまでの「一点突破」とは直接比較はできない事を予めご了承頂きたい。
さらに基準となるエルミタ的レギュレーションモデルのIntel Core i5-750リテールクーラーのスコアは、前回アップデートした室内温度22℃の結果をそのまま使用している。よってその点も考慮して頂ければと思う。では早速テスト結果から見て行こう。
|エルミタ的レギュレーション
|CPUクーラー計測環境および計測方法
1.マザーボードはケースに組み込まない状態で計測する
(ケースファンなどケース内エアフローの影響を受けない状態で、できる限りCPUクーラー本来の性能を見る)
2.マザーボードなどの各種設定はデフォルトのまま行う
3.CPU全コアに100%負荷をかけ、5回テストを行う
(計5回テスト中、平均値のスコアを掲載)
4.騒音値は、ファンから10cmの距離で計測
(騒音計はファンと垂直方向に設置)
5.高負荷状態は「OCCT 3.1.0」を使用
(アイドル時および高負荷時(100%/20分)の数値を計測)
6.コア温度およびファン回転数は「SpeedFan 4.40」を使用
(アイドル時および高負荷時(100%/20分)の数値を計測) |
検証使用機材 |
CPU |
Intel「Core i5-750」 Lynnfield
(2.66GHz/TB時最大3.20GHz/TDP95W) |
マザーボード |
GIGABYTE「P55A-UD3」
(Intel P55チップセット/ATX) |
メモリ |
OCZ「OCZ3P1333LV4GK」
(1333MHz/PC3-10666/CL 7-7-7-20/1.65v) |
SSD |
OCZ Vertex Series 120GB(SATA2/2.5インチ) |
VGA |
XFX「HD-567X-YNFC」
(Radoen HD 5670 512MB DDR5) |
OS |
Windows 7 Ultimate 64bit |
放射温度計 |
AD-5611A(非接触型温度計)
測定範囲(D/S比)11:1 |
騒音計 |
TM-102(国際規格IEC651 TYPE2適合) |
検証ツール |
高負荷状態 |
OCCT 3.1.0 |
温度/回転数 |
SpeedFan 4.40 |
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冷房を入れればよかったと本当に後悔した今回のテストだが、「KUHLER-BOX」はモノも言わず、淡々と仕事を果たしてくれていた(バテバテの筆者は反省することしきり)。
結果はアイドル時で32℃となり、22℃環境のリテールクーラー(35℃)よりも3℃低い結果となった。さらに高負荷時では22℃環境下のリテールクーラー72℃に対し、28.6℃環境下で51℃は良好な結果と言えるだろう。
ただし高負荷時の回転数2109rpmは「KUHLER-BOX」のほぼ最大回転数になるため、ここだけを見ると余力の面ではやや心配な面もある。さらにアイドル時でも1675rpmと公称スペックの最低回転700rpmよりも倍以上の数値となり、誤差を考慮しても高めと言わざるを得ないだろう。
このモデルの性格上、ファンは換装できずデフォルトのファンを使い続けるしかない。そう考えるともう少し風量のある羽形状のファンでも良かったのではないかと思う。
|「KUHLER-BOX」ヒートシンク各部の温度計測
次にヒートシンク各部の温度計測結果を見て行く。今回の計測ポイントは計13箇所。室内温度上昇で隣接するグラフィックスカードの冷却ファンも勢い付いて来た。さてどこまでその影響を受けることになるのだろうか。
前述通り、計測した室内温度が28℃台に達した環境での高負荷時では、どの箇所もなかなか元気な数字となった。
特にグラフィックスカードと隣接する(7)と(8)は、それぞれ47.2℃/46.9℃となり、コア温度の51℃に近い数値にまで達している。ここで分かるのは、室内温度(=ケース内温度)が高くなるに連れ、当たり前のようにGPU温度も上昇する事から、よりCPUを冷やしたい場合(オーバークロック等)冷却能力の高いVGAクーラーに換装する必要があるという事だ。
隣接するグラフィックスカードの冷却能力を考慮した上で、CPUクーラーの性能を判断する必要がある事を再確認しておきたい。
さらに興味深い点はベース部(13)=32.1℃とトップ面(1)=37.1℃が通常のCPUクーラーに比べ温度が逆転しているところだろう。普通CPUコアに近い部分は温度が高く、トップ面の放熱フィンは低い温度になるが、このモデルでは実に5℃もトップ面が熱い結果となっている。
ここから推測すると、ダイレクトタッチのヒートパイプが意外にその効果を発揮しているのではないだろうか。若干心許ない段差のあるベース部ながら、U字型レイアウトのφ6mmヒートパイプ4本はCPUコアから放熱フィンに効率よく熱を移動させているようだ。逆に言えば、ベース部の受熱が弱く、「KUHLER-BOX」の特性はヒートパイプに頼ったCPUクーラーと言えるのではないだろうか。
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|総評 “無難路線”が仇に?どこか突出して欲しいところ
「一点突破」の総評について、今一度ご説明しよう。本稿の主たる目的は、限りなく一般的使用に近い目線での使用感であり、メーカー提供機材の場合でも、駄目な点は遠慮無くバッサリとマイナス評価もさせて頂いている。またリテールクーラーがありながら敢えて購入する汎用CPUクーラーだけに、「冷えて」「静かで」「取り付け易く」、さらに「適正価格」である事が“最低条件”であり、そもそも20点満点でなければいけないという立場から、減点法で目安となる総合ポイントを付けているという具合だ。
当然ながら、緻密な「実験」という立場ではないため、それぞれの感じ方もあるだろう。音の大きさを表現する事が難しいように、ある程度は主観となってしまう事はご了承願いたい。
ではそれらを念頭に「KUHLER-BOX」の評価ポイントを解説しよう。
【静音性】 4.0ポイント
これまでファンをサンドイッチ状に搭載させたCPUクーラーを数種類テストした経験上、これらに共通している点として音の聞こえ方が挙げられる。
一般的なファンの搭載方法は、ヒートシンクに片面のみ密着させているワケだが、両面に放熱フィンがある場合、吸気/排気双方に“障害物”が存在する事になる。例えば口笛は、唇の隙間によって吸っても吹いても音が出る。つまり理論上、サンドイッチ形状は吸い込む側も吹き出す側も場合によっては双方から音が出る事になる。
フィンピッチによる音の聞こえ方については前々から興味があるため、いつかテストしてみたいと思っているが、どうやら「KUHLER-BOX」は両方向から音が聞こえてくるようで、テスト中の最小回転数1675rpm時でも気になるレベルではないものの、ある程度の音は発生していた。
今回のテスト環境(外気温による影響は大きい)においては残念ながら再現できなかったものの、公称最小回転数は700rpmであり、高音域のキンキン音が発生しない性格のファンであるため、ケース内に収めてしまえば十分許容範囲である事は付け加えておかなければならない。
【冷却性能】 4.0ポイント
室温が前回テストの22℃から28.6℃に跳ね上がり、いよいよ人もPCも辛い季節になってしまった。本来であれば基準となるCore i5-750同梱リテールクーラーの再テストを行わなければならない所、時間の関係上今回は割愛させていただいている(次回はやります、スミマセン)。よって、「KUHLER-BOX」との温度比較は本当に参考程度となっている。
さて冷却性能はアイドル時32℃、高負荷時51℃と、室温を考慮すれば合格点は出せるだろう。反面、高負荷時の回転数(2109rpm)は恐らくこのモデルの最大回転に達しているため、TDP100W超えまたはオーバークロック環境での冷却性能は気になるところではある。
ただし、リテールクーラーの室温22℃環境での高負荷時72℃に比べれば、「KUHLER-BOX」の51℃は約20℃のアドバンテージがあり、換装する価値は十分にあるだろう。
【取り付け易さ】 4.0ポイント
取り付けしにくいとは言わないまでも、取り付け易いとも言い切れず、限りなく3.5に近い4.0ポイントとした。
作業工程は一般レベルで、マニュアルを見なくてもベースリテンションを組み立てる事はできる。ただしパーツ点数の多さはやはり如何ともし難く、Antecが既存の強力なライバルメーカーに勝つためには今後、ひと工夫は絶対条件だ。
【コストパフォーマンス】 4.0ポイント
7月7日現在の実勢価格は4,700円台〜4,900円台と言ったところだが、この“押し出し”からは順当やや安めではないだろうか。ただし全体のパフォーマンスから言うと、4.0ポイントとした。
AntecがCPUクーラーに本格参入しそうな第1弾となる「KUHLER-BOX」は、非常に無難な路線を選択している。ただしPCケースでの大成功とこれまで築いてきたブランドイメージ、さらに付け加えるならば後発となるCPUクーラー本格参入モデルとしては、もう少し突出したところがあっても良かったのではないだろうか。オーソドックスなスタイルから攻め込むのも戦略のひとつだが、今後ラインナップを増やす毎に“Antecらしさ”をどのように出して行くのかに注目して行きたいと思う。 |
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最後に「KUHLER-BOX」全体の印象を付け加えると、ファンの力がヒートシンクにやや負けているように思えてならない。繰り返しとなるが、「KUHLER-BOX」はファンを任意で換装する事ができないため、定格のTDP100W以下で使用する事に於いては問題が無いものの、それ以上の使用を想定しているならば、極端な冷却能力は期待しない方が無難かもしれない。
Antec「KUHLER-BOX」総合評価 |
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【エルミタ的検証用CPUクーラー募集】
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