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超ロープロファイルデザインなりの苦悩

 ただのロープロファイルデザインというだけでなく、高性能を狙う「KOZUTI(小槌)」は、“小さくても一生懸命”CPUを冷やそうと考えられている。
 その特異なファンマウントにより、全高40mmの限られたスペースにφ6mmヒートパイプ3本を搭載し、吹きつけよりも不利となる吸い出しエアフローを補う工夫は、開発者の意欲と、少しでもCPUの温度を下げたいという思いが込められているように思う。しかしこのレイアウトを採用した事による代償はある程度覚悟しなければならない。

KOZUTI
「一点突破」テスト機材のASUSTeK「P8P67 DELUXE」(ATX)に搭載させた「KOZUTI(小槌)」。さすがにATXマザーボードへ積極的にチョイスされる事は少ないだろう

 ロープロファイルデザインで高冷却が謳われているだけに、多くのユーザーはMicroATXやMini-ITXでの使用を想定するだろう。省スペースPCケース向けのCPUクーラーは選択肢が少なく、「KOZUTI(小槌)」のリリースを心待ちにしている人も多いはずだ。

 ただし注意しなければならないのは、CPUソケット周りとの物理的干渉だ。80mmファンをヒートシンクから吊り下げる事により、ヒートパイプはそれを避けるように張り出しているため、CPUソケット周りにあるチップ用ヒートシンクに干渉し、搭載できない場合がある。
 特に近頃のMini-ITXはコンシューマ向けに設計された、決して非力ではないシステムが構築できるようになっているため、中にはチップ冷却用ヒートシンクが大型化され、さらにさまざまな構成部品がCPUソケット周りにひしめき合っている。

KOZUTI
KOZUTI KOZUTI
ASUSTeK「P8P67 DELUXE」に搭載してみると、CPUソケット周りのヒートシンクに埋もれているように見える

 繰り返しとなるが、ファンを吊り下げ式にし、ヒートパイプがそれを避けるように張り出す事で、110×103mmのヒートシンクがベース部までひとつのブロックのようにスペースをほぼ占有する。高冷却を狙う代償としては致し方ないところだが、購入前には必ず搭載させるマザーボードのCPUソケット周りのスペースを確認する必要がある事を覚えておきたい。

KOZUTI
ASUSTeK「P8P67 DELUXE」(ATX)と、J&W「785G-SP128MB」(Mini-ITX)の占有イメージ。使用用途として最も想定されるMini-ITXマザーボードでもチップ用ヒートシンクにファンおよびヒートパイプ等が物理的干渉を起こす
KOZUTI
「KOZUTI(小槌)」はいわゆる“高床式”だが、CPUソケット周りの構成部品を避けるためではなく、80mmファンを避ける事が目的であるという点は、通常の汎用CPUクーラーとの大きな違いだ



全高40mmを実現する薄型80mmファンと搭載方法

 前述通り、搭載されるファンはヒートシンク下部へ吊り下げ式で固定されている。
 ファン口径は80×80×10mmのリブ無しフレームを採用。固定用ワイヤーを外し、横にスライドさせる事で簡単に取り外す事ができるようになっていた。ファンの型番は「SY8010SL12M-P」で、DC12V/0.20Aの4pinコネクタPWMに対応。ベアリングはスリーブで、薄型ファンにはよくある11枚羽仕様となっている。

KOZUTI KOZUTI
ヒートシンク下部に搭載される80mmファンは、ワイヤー固定式。マザーボードへの装着時を含め、通常外す必要はない
KOZUTI KOZUTI
搭載ファンは80×80×H10mm「SY8010SL12M-P」(DC12V/0.20A)。軸受けはスリーブベアリングで、羽枚数は11枚仕様
KOZUTI
ファンスペックは800〜3300rpm/8.2〜32.5dBA/6.0〜24.82CFMのPWM仕様。超ロープロファイルを実現するために、ヒートシンクにワイヤー固定で吊り下げられている。エアフローレイアウトはいわゆる吸い出し方式が採用されている



扱いやすい「E.I.S.」(Easy Installation with Screw)

 「KOZUTI(小槌)」は、さすがに小型CPUクーラーだけあって、重量は250gと、汎用CPUクーラーとしては非常に軽い。とは言え、Intel Core i5-2500K同梱のリテールCPUクーラーも実際に計ると257gなので、両者はほぼ同じだった。
 250g程度のCPUクーラーを搭載させる場合、重量級のCPUクーラーと違ってマザーボードが歪む等の心配はまず無い。よって、リテールCPUクーラーはプッシュピン(ファスナー)タイプが採用されている。
 これが出た当時、なんとも心許なく一部では不評であったが、使い慣れてくるに従って耐久性もそこそこある事が分かり、気がつけば文句を言う人は少なくなってしまった。使い勝手も良く、「KOZUTI(小槌)」のような軽量モデルには向いているはずだが、ネジ留め式が採用されていた。

 「KOZUTI(小槌)」の固定方法は「E.I.S.」(Easy Installation with Screw)と名付けられた、サイズオリジナルリテンションキットを使用し、軽量モデルらしくバックプレートを必要としない。
 Intel系、AMD系それぞれリテンション金具が用意され、マザーボード背面から専用ネジでテンションをかけてゆく。同じくサイズには「F.M.S.B.3」(Flip Mount Super Back-plate 3)というオリジナルリテンションキットが存在するが、「E.I.S.」は簡素化されつつもその一部が踏襲され、完成度や工作精度は高かった。

 ちなみに軽量モデルでありながら、扱いやすいプッシュピンタイプが採用されていない理由は、オリジナリティにシフトしたというよりも、ヒートシンクのサイズが大きく、真上からピンを押すことができない。そもそも物理的に諦めるしかない。

KOZUTI KOZUTI
左がIntel用、右がAMD用の取り付け用金具。台座となるこの金具をヒートシンク底面のベース部に皿ネジで固定する
KOZUTI KOZUTI
ネジ受け固定金具(リング状)と固定用ネジ受けを、台座4箇所に固定。これは超大型CPUクーラー「スサノヲ」等でも採用されている、サイズのオリジナルマウント構造「F.M.S.B.3」(Flip Mount Super Back-plate 3)と共通の手順
KOZUTI
固定用ネジをセットした金具をヒートシンク底面に皿ネジで固定すれば本体部分の作業は完成
KOZUTI KOZUTI
ゴム製の絶縁ワッシャー。薄い方がIntel用、厚い方がAMD用
あらかじめ本体固定ネジに絶縁ワッシャーを付けておく
KOZUTI KOZUTI
リテンション金具にネジ留め。ここはセオリー通り、対角線位置のネジを平均的に締め付けていこう。ネジ山が切られている最後までテンションをかけても大丈夫
KOZUTI
 
KOZUTI
テスト用メモリのCORSAIR「VENGEANCEシリーズ CMZ8GX3M2A1600C8」のヒートスプレッダより低い事が分かる。つまりこのメモリが搭載できるPCケースであれば取り付けられるという事を意味する。たしかに超ロープロファイルCPUクーラーだ


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Scythe
KOZUTI
小槌
型番
SCKZT-1000
サイズ
110×103×H40mm(全体寸法)
80×80×H10mm(付属ファン)
重量
250g
ヒートパイプ
φ6mm×3本
放熱フィン
アルミニウム製
ファン
回転数:
800±30%〜3300rpm±10%(PWM)
騒音値
8.2〜24.82dBA
風量
6.0〜24.82CFM
コネクタ
4pin
ベアリング
スリーブベアリング
対応ソケット
Intel LGA1366/1156/1155/775
AMD Socket AM3/AM2+/AM2
発売日

2011年4月20日(出荷開始)
市場想定売価
税込2,980円前後
メーカー製品情報
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