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|「SST-FT03」の内部構造をチェックする
外観チェックの後はたいへん興味深い内部構造をくまなく見て行く。外観画像だけでは内部構造が今ひとつ想像しにくいが、さすがにこれだけ凝ったスタイルを採用するだけに、内部設計こそが「SST-FT03」の鍵を握っていると言えるだろう。
またその中でも周辺パーツのレイアウトを決めてしまうほど重要なポイントはマザーボードの90度回転レイアウトの採用だ。これは再三引き合いに出される「RAVEN」シリーズや「撮って出し」Vol.22で紹介した「SST-FT02」で培われた構造を継承したものだが、PCを使用するには必要不可欠な外部機器との接続ケーブル類がトップ面にすべて集約される事でアクセスの利便性だけでなく、設置場所の選択肢を広げる事に成功している。
この点については代理店からもアピールされており、一般的なコンパクトサイズのPCケースでも奥行きは400mmが必要なところ、「SST-FT03」では約300mmあればOK。よって部屋のコーナーにぴったり設置することができる。(ここがさらに“ゴミ箱”と言わしめる所以かもしれない)
それだけでなくマザーボードの90度回転レイアウトは内部エアフロー構造との関係から垂直方向に設置されるグラフィックスカードにも冷却面で有利とされ、斬新ながら“次世代スタンダードレイアウト”になり得る要素を十分に含んでいる。
設置場所の優位性、そして理想的な内部構造となるマザーボード90度回転レイアウトは「SST-FT03」のようなコンパクトPCケースこそ本領を発揮するスタイルなのかもしれない。
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・4隅の支柱が「SST-FT03」最も重要な構成部位である事がよく分かるショット。こうしてサイドパネルを全て外してみるとギャレーのカートにも見える |
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■マザーボード搭載スペース
MicroATX対応「SST-FT03」のマザーボード搭載位置は、その特異な外観とは裏腹に通常のPCケースとなんら変わりなく、フロントパネルに対して垂直にレイアウトされている。
このマザーボードトレイを境に、ストレージドライブスペースと拡張カードや冷却ファン等の主要構成パーツスペースに分けられ、それぞれ十分な空間を確保。また構成部品中、最大のスペースを要するATXサイズの電源ユニットをボトム部に配置する事で、各構成パーツとの干渉および組み込み易さに配慮がなされている。
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・上から見た状態での各構成パーツ簡易配置図。マザーボードトレイを仕切りに、限られたスペースの中で効率よくレイアウトされている |
・電源搭載スペースはボトム部に配置したのは組み込み易さへの配慮とも言えるだろう |
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■電源ケーブルはケース内部の中継用ケーブルを使用
オプション扱いとなる電源ユニットは通常のATXサイズが搭載でき、設置場所は底面レイアウトを採用。さらに徹底的に外観が損なわれる事を嫌い、電源ケーブルをボトム部から引き出すための専用中継ケーブルが内蔵されていた。
なお現在流通する多くのコンシューマ向け電源ユニットが採用する底面ファンレイアウト用に大きな吸気口が設けられ、そこにはホワイトカラーのメッシュフィルターが装着されていた。
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・オプションの電源ユニットはボトムレイアウトを採用。標準ATXサイズが搭載可能で、奥行きは180mmまでに対応。一般的モデルのモジュラー式でも難なく搭載できるはずだ |
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・底面に搭載させた電源ユニットからトップ部までケーブルを引き回す、専用の電源ケーブルがケース内部に搭載されている |
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・トップ面にある電源ソケット。ここから家庭用コンセントに電源ケーブルを挿す事になる |
・電源ユニット部と内部ファンの位置2カ所に用意された通気孔を塞ぐメッシュフィルター。網目はきめの細かいタイプ |
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・ボトム部のフィルターもツールフリー仕様。よくある引っかけスライド式かと思いきや、フィルター側8カ所に磁力の弱いマグネットが仕込まれており、スチールのボディにくっついてしまうという仕組み。フロント扉などでマグネットが使われる事はあるものの、このような使われ方は非常に珍しい |
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■通常サイズのカードが搭載可能な拡張スロット部
その特異な形状から、筐体内はさぞかし狭いのではないかと思われるかもしれないが、驚くほど狭いという印象は無い。
これは先ほども触れた通り、マザーボードトレイと背中合わせに、ストレージスペースが設けられているためで、両者を板1枚で分断させる事により、デザインを優先したがために起こる拡張性の犠牲を極力減らす工夫がなされている。
拡張スロット部に限って言えば、通常サイズのカードに対応し、非力なシステムで妥協するといった事がなく、手持ち資産も活用できる。
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・標準サイズの拡張スロットは4段。ブランク用ブラケットはスリット付きの通気孔仕様。2Slot占有デザインのグラフィックスカードを搭載した場合、上2段のスロットを使用することになる |
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・背面にはブランクスペースが用意されており、ここにはオプションで外部から簡単にCMOSクリアができるジャンパピン接続タイプのアクセサリ「SST-CLEARCMOS」(画像右)が搭載できる |
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|3.5インチHDD×3、2.5インチSSD×1搭載可能なドライブ構造
次にストレージドライブを見て行く。「SST-FT03」では、3.5インチホットスワップベイ×1、3.5インチシャドウベイ×2、2.5インチシャドウベイ×1、そしてスリムタイプの光学ドライブベイ×1が装備されている。特に容量単価が低くなっている3.5インチHDDは、複数搭載したいユーザーが多い事だろう。PCケース選びの条件として、ドライブが何台搭載できるかは最重要ファクター。2.5インチSSDスペースを含め、4台のストレージデバイスが搭載できる点は、なかなかポイントが高い。では個々のストレージスペースを確認して行こう。
■3.5インチSATAホットスワップベイ
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・マザーボードトレイ裏面のストレージデバイススペース。最上段部には、トップパネル部からアクセスができるホットスワップベイが装備されている |
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・スライドロックを解除することで、ベゼル部が跳ね上がる仕組み。別途カートリッジを必要とせず、3.5インチSATA HDDをそのままの状態で装着する事ができる。なお対応HDD厚は25.4mmで、薄型タイプは推奨できないとの注意書きもなされていた |
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・SATAコネクタ受け側からSATAデータケーブルと4pinペリフェラル電源ケーブルが伸び、それぞれを別途接続させる事でホットスワップベイが使用可能となる |
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■3.5インチ/2.5インチシャドウベイ
ホットスワップベイ以外のストレージスペースをチェックして行く。前述通りこのモデルでは3.5インチシャドウベイを2台分、さらに付属のマウンターを使用する事で2.5インチSSD/HDDを1台搭載させる事ができる。レイアウトはホットスワップベイ横に縦位置1台、その下のエリアに横置きで1台、さらに2.5インチを縦置きに1台となり、フル搭載させた場合でもそれぞれケーブルが干渉する事はない。
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・限られたスペース内で無駄なく配列されるシャドウベイ。互いに伸びるケーブルが干渉する事もなく、これ以上無い理想的なレイアウトと言えるだろう |
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・なお搭載には専用のインチネジを使用。ツールフリー仕様ではない |
・同梱されているマウンターを使用すれば2.5インチSSD/HDDも搭載できる |
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・システム用にSSDを使うユーザーは非常に多い。どんなPCケースでも最低1台分の2.5インチシャドウベイが無ければ及第点も与えられないといった状況 |
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・右サイドパネルのホットスワップベイ部にはアルミニウムブロックが装着されている。“受動冷却特性”が得られるとマニュアルには記載されているが、要するにHDDの熱をサイドパネルに伝導させ、拡散させようとしている。効果のほどはやや怪しげだが、意外な工夫が凝らされている事には感心してしまう |
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■SilverStoneが譲らなかった薄型光学ドライブベイ部
SilverStone側が苦慮したであろう部分のひとつが、ここで紹介する光学ドライブベイではないだろうか。
フロントパネル中央より下の部分には、エイの口、またはATM横のくず入れの如き開口部が設けられており、これがローディング方式スロットインタイプの薄型光学ドライブベイ搭載スペースだ。
ここからは勝手な想像だが、通常の5.25インチサイズの光学ドライブ搭載も考えにはあっただろう。しかし薄型光学ドライブベイ仕様となったこの場所に5.25インチドライブスペースを作るには、奥行きが足りない。無理に作ったとしても拡張スロットはすべて潰されてしまう。
さらに別の場所を考えるならば、縦置きとなるホットスワップベイ横の3.5インチシャドウベイ部だが、当然貴重なシャドウベイが1つ無くなる上、幅を拡張する必要もある。
5.25インチ光学ドライブを無理に搭載させることで、あれこれ改良するくらいなら薄型光学ドライブにしてしまえといった所かもしれないが、さらに何故選択肢が絶対的に少ないスロットインタイプにしたのか?という疑問が残る。
引き続き想像の域を出ないが、恐らく最後はデザインが優先されての事だろう。幸いにして(?)、SilverStoneからも「SST-SOD02」という型番のスロットインタイプのDVDドライブが販売されているのでそちらを用意すれば良いのだが、“力技”で、トレー式を無理矢理搭載させ、使用するときはフロントパネルを外すという方法も無きにしも非ずだ。
いずれにせよ、SilverStoneが頭を悩ませたであろう光学ドライブレイアウトは、最終的に外観デザインだけは譲れないと頑なに妥協しなかった部分ではないだろうか。
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・ディスクローディング方式はスロットイン。イジェクトボタンが無いのでディスクの取り出しはOS上から行う事になる |
・白く塗装された薄型光学ドライブベイ搭載用マウンター |
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・マウンターは3点のネジ留め式。薄型光学ドライブは、ドライブ側に付属されるネジを使用する |
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・次はファンレイアウトについて事細かにチェックしてみたい。SilverStoneのPCケースが提唱する正圧設計および煙突構造は、どのように活かされているのか |
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