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|「KUHLER-FLOW」冷却能力(温度)、騒音値、回転数テスト
ではAntec CPUクーラー 3兄弟の最後を飾る「KUHLER-FLOW」の各種テストを実行してみよう。
|エルミタ的レギュレーション
|CPUクーラー計測環境および計測方法
1.マザーボードはケースに組み込まない状態で計測する
(ケースファンなどケース内エアフローの影響を受けない状態で、できる限りCPUクーラー本来の性能を見る)
2.マザーボードなどの各種設定はデフォルトのまま行う
3.CPU全コアに100%負荷をかけ、5回テストを行う
(計5回テスト中、平均値のスコアを掲載)
4.騒音値は、ファンから10cmの距離で計測
(騒音計はファンと垂直方向に設置)
5.高負荷状態は「OCCT 3.1.0」を使用
(アイドル時および高負荷時(100%/20分)の数値を計測)
6.コア温度およびファン回転数は「SpeedFan 4.40」を使用
(アイドル時および高負荷時(100%/20分)の数値を計測) |
検証使用機材 |
CPU |
Intel「Core i5-750」 Lynnfield
(2.66GHz/TB時最大3.20GHz/TDP95W) |
マザーボード |
GIGABYTE「P55A-UD3」
(Intel P55チップセット/ATX) |
メモリ |
OCZ「OCZ3P1333LV4GK」
(1333MHz/PC3-10666/CL 7-7-7-20/1.65v) |
SSD |
OCZ Vertex Series 120GB(SATA2/2.5インチ) |
VGA |
XFX「HD-567X-YNFC」
(Radoen HD 5670 512MB DDR5) |
OS |
Windows 7 Ultimate 64bit |
放射温度計 |
AD-5611A(非接触型温度計)
測定範囲(D/S比)11:1 |
騒音計 |
TM-102(国際規格IEC651 TYPE2適合) |
検証ツール |
高負荷状態 |
OCCT 3.1.0 |
温度/回転数 |
SpeedFan 4.40 |
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ここは「一点突破」の原点に立ち返り、リテールクーラーとの純粋な比較で「KUHLER-FLOW」の冷却能力を見て行きたい。
まずアイドル時だがリテールの44℃に対し36℃(-8℃)、高負荷時74℃に対し57℃(-17℃)と、確実に上回る結果となった。数字上だけでも十分に“換装意義”はあると言い切って良いだろう。ただし、騒音値は若干気になるレベルと言える。
「KUHLER-FLOW」は前回テストの「KUHLER-SHELF」と同じスペックのファンが搭載されているが、いずれも高負荷時は静音レベルを逸脱しており、デシベル値以上の音を感じてしまう。どちらかと言えば、風量で冷却させるタイプだが、ファンの換装は容易なので、あまりにも騒音値が気になる場合は、別途汎用120mmファンを装着する事を検討したい。
|「KUHLER-FLOW」ヒートシンク各部の温度計測
「KUHLER-FLOW」では、都合9カ所の温度計測を行った。結果、コアに一番近いベース部で最大温度41.0℃(9)、最小31.6℃はコアから遠いトップ部(5)となった。グラフィックスカードGPU裏に隣接する(8)は40.9℃と2番目に高温となり、これまでのテスト通り、順当な結果と言えるだろう。概ね中心から上部が低く、下部が高いのは、サイドフローらしい性格がよく表れている。
|「SHELF」と「FLOW」。そしてヒートパイプの話
「KUHLER-FLOW」と「KUHLER-SHELF」は兄弟の関係にある。
タイプの違いこそあれ、放熱フィンのサイズを測ると、共に約W120×D110×H45mm(各最大部)で、ヒートパイプを貫通する穴も違わず、共通部品が使われている事が分かった。ただし大きな違いはヒートパイプの“曲げ数”にある。
![Antec](image/08_440.jpg) |
「KUHLER-SHELF」(左)と「KUHLER-FLOW」(右)はソックリ。まさに兄弟である事が分かるショット |
両者共にφ6mmの銅製ヒートパイプは7本で構成され、トップフローの「SHELF」は約90度2カ所、サイドフローの「FLOW」は約90度1カ所で成形されている。さらにそれぞれに使用されているヒートパイプの長さを測ってみることにしよう。
![KUHLER-FLOW](image/09_440.jpg) |
「KUHLER-FLOW」(左)と「KUHLER-SHELF」(右)のヒートパイプ曲げ成形比較 |
ヒートパイプ長さの比較(実測値) |
KUHLER-SHELF |
KUHLER-FLOW |
270mm
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200mm
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280mm |
210mm |
290mm |
220mm |
300mm |
240mm |
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ヒートパイプの長さはパイプに沿うようにメジャーで計測している。究極の実測値である事は予めご了承頂くとして、各々長さが異なる4種のヒートパイプが使用されている事が分かった。
トップフローで“高床式”の「SHELF」は、2段階曲げ加工により、 「FLOW」よりも長いヒートパイプが採用されていた。
![KUHLER-FLOW](image/14_440.jpg) |
トップフローの「KUHLER-SHELF」は、“高床式”が採用されている分、「KUHLER-FLOW」に比べ長いヒートパイプが使用されている |
|ヒートパイプの重要な役割とこれからの冷却機器
![KUHLER-FLOW](image/06_220x180.jpg) |
上段4本、下段3本を交互にレイアウトされたヒートパイプ。放熱フィンへの理想的な熱移動を実現する |
ヒートパイプの役割を簡単に言うならば、熱源(CPUコア)からヒートシンク(放熱フィン)に熱を移動させるところにある。
さらに移動させる真の目的は、放熱フィンの面積をより広く稼ぐためで、CPUソケット周りの限られたスペースから離れた別の場所に大型ヒートシンクを設置する事で、大口径ファンとの組み合わせにより高冷却+静音稼働ができるというワケだ。
リテールマーケットにヒートパイプを搭載したCPUクーラーが登場したのは2000年夏頃で、ちょうど10年前だ。
当時のコンシューマ向けヒートパイプ搭載CPUクーラーは試行錯誤の段階で、思えば単純にヒートシンク内での熱移動速度を高めるための目的であった。
その後、冷却機器自体の進化と冷却される側のCPUの進化が相まって、現在のスタイルが確立されたと言えるだろう。今から10年も経てば、さらに全く考えも及ばなかった使われ方が主流になっているかもしれない。
筆者の勝手な想像だが、マザーボードのソケット側に空冷ではない冷却装置が内蔵され、ペルチェのように電気的に熱を奪い取り、どこかでその熱を破壊(?)してしまうようなモノができているのではないだろうか。
そのためには、電源ユニットが一役買うのではないかと思うのだが、冷却機器を中心にしたフォームファクタの大掛かりな変更は「BTX」の例でも分かる通り一筋縄ではいかない。自作の世界での理想と現実の溝はなかなか埋められないというのが現状だが、思いもよらない技術の進化がきっと待ち受けている事だろう。
|ヒートパイプの理想的なレイアウト方法
ヒートパイプの理想的な設置方法は、一般的にボトムヒートが基本となっている。ボトムヒートとは入熱が下方向となり、これを垂直方向に搭載する事で、作動液が効果的に移動する。
これを仮に10とした場合、水平ヒートで5割程度、トップヒートで3割程度にまで能力は低下すると言われている。ヒートパイプも進化し、改良が重ねられているため、これは一般論になりつつあるが、組み込むPCのレイアウトを考慮しつつCPUクーラー選びをすれば、より効果的な冷却効果を得る事ができるはずだ。
![](image/15_440.jpg) |
ボトムヒートを10とした場合、水平ヒートで約5割、トップヒートで約3割の能力が低下すると言われているCPUクーラー採用のヒートパイプ |
さらにヒートパイプの長さや曲げ加工により能力が左右される。特別なヒートパイプを除けば、CPUクーラーで使用されているもので300mm程度までが現実的な長さと言われている。さらにCPUクーラーで使われている多くは、内部の動作液が200℃程度に達すると、ヒートパイプ自体が破裂するが、PCの場合ハードが先に壊れてしまうだろう。つまり通常動作での心配は無い。
|結局サイドフローとトップフローはどちらが有利なのか?
少々脱線したので、改めて本題に戻る事にしよう。いよいよAntec CPUクーラー3兄弟のクライマックスである。
Antecは今回3モデルのCPUクーラーを用意してきたが、最上位の「KUHLER-BOX」を除く2モデルは、たいへん興味深いラインナップと言える。同一ヒートシンクをそれぞれトップフローとサイドフローにレイアウトしているという事は、すなわち両者どちらのエアフローが冷却に有利なのかを比較するという意味で、恰好の“サンプル”を提供した事になってしまった。
恐らくAntecはなんら意図無く、バリエーションの幅を増やす意味で両者の投入をしたと思われるが、結果的にCPUクーラーのヒートシンクレイアウトの是非を議論するレベルにまで発展しかねない。その意味では、もっと話題になっても良いモデルであると思う。ではサイドフローとトップフローは、どちらが有利なのか?
「KUHLER-SHELF」(トップフロー)と「KUHLER-FLOW」(サイドフロー)のテスト結果を今一度確認してみよう。なお「KUHLER-SHELF」は前回テスト時の室内温度と差異をなくすため、比較用に再度テストを行っている。その結果を以下の表にまとめてみた。
室内温度31.5℃ |
KUHLER-SHELF |
KUHLER-FLOW |
アイドル時 |
34℃ |
36℃ |
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44.2dBA/1634rpm |
45.8dBA/1753rpm |
高負荷時 |
55℃ |
57℃ |
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51.9dBA/2183rpm |
53.2dBA/2265rpm |
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|冷却能力・騒音値・回転数、いずれもトップフローが優位
同一環境で行ったテストにおいて、数字上ではトップフロータイプの「KUHLER-SHELF」がいずれの項目においてもサイドフロータイプの「KUHLER-FLOW」を凌ぐ結果となった。これを見る限り、トップフローは今回の“テスト環境”において、冷却能力が優れている言える。
サイドフロータイプ花盛りの現在、衝撃的な結果と感じる読者も多いだろう。ただしこの結果をもって、すべてのCPUクーラーに当てはまると解釈するには危険である事を付け加えなければならない。あくまでAntecの2モデルでの結果だ。
トップフローとサイドフローには、それぞれに優位性があり、それはシステムの環境にも大きく依存する。ただしAntecの2モデルに限って言えば、120mmファンからのエアフローがベース部にも理想的に風があたるため、急激なCPUの温度上昇を抑制する役割を果たしているのかもしれない。(だとすれば、ベース部上に小型ヒートシンクがあると、もう少し冷却性能が向上する可能性がある)
また、ケース内で稼働させた場合では、吸排気エアフローの影響が出て、結果は逆転する可能性もあるだろう。
ここでは純粋に両者の比較を行ったが、この結果を見てこれまでの見方を若干修正する必要があるかもしれない。その意味において、今回のテストは非常に有意義なものとなった。 |
|総評 オーソドックスながらヒートパイプ7本構成は有利
勝手に名付けた“Antec CPUクーラー 3兄弟”の最後を飾った「KUHLER-FLOW」だが、このモデルからCPUクーラーの基本や特性など、色々なファクターについて再考する事ができた。その功労者という意味において、心情的にジャッジは満点の20ポイントを出したい所だが、さすがにそうもいかない。と言うわけでいつも通り、各々の項目毎に採点を行ってみたい。
【静音性】 3.5ポイント
高負荷時は53.2dBAなため、「静音Cooler」とはさすがに言いにくい。「KUHLER-SHELF」と同じ風量重視ファンが採用されているが、エアフローの向きに限らずそれなりの音が発生する。
外気温が下がれば、高負荷時の回転数も多少改善されると思われるが、どうしても静かに使いたいと思うならば、やはり汎用ファンの換装を検討した方が得策だ。「KUHLER-SHELF」同様、搭載ファンはやや元気が良すぎる印象を持った。
【冷却性能】 4.0ポイント
Intelリテールクーラーに比べ、確実に換装の効果が現れており、汎用CPUクーラーとしての役割は十分果たしている。搭載ファンの風量から、“風量で冷やすタイプのCPUクーラー”という印象だが、一方でφ6mmのヒートパイプ7本構成の恩恵も多分に見受けられ、比較的薄めのヒートシンクでありながら、放熱フィン全体に効率よく熱が回っているようだった。
前述の搭載ファンの回転数をもう少し下げ、さらに放熱フィンの面積を広く採る事で、さらに静音高冷却CPUクーラーになるかもしれない。
【取り付け易さ】 4.0ポイント
Antec CPUクーラー3兄弟共通リテンションは、個人的に最後までしっくりと来なかった。冷静に考えると、他社製のリテンションと大きな違いは見受けられないものの、特に今回指摘したネジ留め箇所は、如何ともし難い。
共通部品の使用はコスト削減に貢献するが、ヒートシンクデザインによって工夫するのは、製造メーカーの役割と言えよう。次回のモデルからの改良に期待しつつ、今回も3.5ポイントに極めて近い4.0ポイントとした。
【コストパフォーマンス】 4.5ポイント
暑い夏の室内環境で、良好な冷却能力を発揮した結果から、実売価格4,500円は悪くない。ただし、ファンの騒音値を気にして汎用ファンに換装するならば一気に6,000円程の出費を覚悟しなくてはならず、コストパフォーマンスの4.5ポイントは改めなくてはならないだろう。
今回の結果はもちろん、ファンを換装せずに使用した場合のみに適用されるものである事を念のため付け加えておきたい。 |
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Antec「KUHLER-SHELF」総合評価 |
![test](../KUHLER-SHELF/image/test05.jpg) |
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【エルミタ的検証用CPUクーラー募集】
エルミタ的「一点突破」では検証希望CPUクーラーを募集しています。国内外を問わず、ご興味のあるメーカー様・代理店様は編集部までご一報ください。 |
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機材協力:株式会社リンクスインターナショナル
© GDM Corporation All Rights Reserved. |
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