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|謎の状況を作り出す、エアフローレイアウトの難しさ
ここで終わればいいものの、実は以前エルミタ編集部に読者から1通のメールが届いたのでご紹介しなければならない。それは非常に興味深い内容であった。
メール内容を要約すると「リアファンの強弱により、トップファンのエアフロー方向が変わってしまうようだ。テストをしてほしい」というものだった。
読者が使用しているPCケースはAntec「NINE HUNDRED」で、今回の「DF-85」とは若干違うものの、トップ200mm×1基 + リア120mm×1基はそれぞれ3段階の回転数切替が可能。任意で回転数をアレンジできるという点では同様のコンセプトと言えるだろう。
そこでこの投稿を元に、「DF-85」でその現象を確認してみる事にした。
|リアファンの影響で排気が吸気に変化する現象を確認
何はともあれ、まずはテスト時の動画をご覧いただきたい。ここでは「DF-85」のリア排気120mm×2基をHigh設定に、トップ排気140mm×2基をLow設定にして極端な回転差を付けている。
若干見辛いかもしれないが、線香に火を付け、その煙の方向を確認してみたところ、確かに共に排気となるリアとトップのファンに極端な回転差を付けてみると、なるほどトップの前面側だけがエアフロー方向が吸気になってしまう事が確認できる。(トップ背面側は変化が見られなかった)
実際に手をかざしてもそれが確認でき、試しに付箋を載せてみたところ、見事に張り付く。この件に関してはもっと詳細なテストが必要であり、ここは完全に想像の域となるが、フロント吸気(120mm×3基※Low設定)とリア排気のエアフローライン(仮にそう呼称するならば)が強力で、トップ140mm排気のフロント側エリア付近では「正圧」(positive pressure)と「負圧」(negative pressure)のバランスが微妙に変わるのではないだろうか。
読者の指摘通り、これはなかなか興味深い結果となったが、別の機会にさらなるテストを行ってみたいと思う。
|思い切ってトップファン1基を吸気にしたらどうなるのか?
ならばフロント側トップファンを思いきって吸気にしてみたらどうなるだろうか。筆者の興味だけで同様のテストを行ってみる事にした。
■トップファン1基を吸気にした場合
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アイドル時 |
高負荷時 |
CPU |
36℃ |
53℃ |
GPU |
53℃ |
71℃ |
ケース内 |
30.9℃ |
31.2℃ |
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アイドル時 |
高負荷時 |
CPU |
38℃ |
53℃ |
GPU |
55℃ |
72℃ |
ケース内 |
30.9℃ |
31.2℃ |
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アイドル時 |
高負荷時 |
CPU |
37℃ |
52℃ |
GPU |
55℃ |
70℃ |
ケース内 |
31.0℃ |
31.1℃ |
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アイドル時 |
高負荷時 |
CPU |
37℃ |
52℃ |
GPU |
57℃ |
71℃ |
ケース内 |
30.9℃ |
31.2℃ |
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アイドル時 |
高負荷時 |
CPU |
38℃ |
53℃ |
GPU |
58℃ |
72℃ |
ケース内 |
31.5℃ |
31.9℃ |
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アイドル時 |
高負荷時 |
CPU |
39℃ |
53℃ |
GPU |
59℃ |
72℃ |
ケース内 |
31.2℃ |
31.5℃ |
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アイドル時 |
高負荷時 |
CPU |
37℃ |
53℃ |
GPU |
58℃ |
71℃ |
ケース内 |
31.5℃ |
31.8℃ |
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アイドル時 |
高負荷時 |
CPU |
37℃ |
52℃ |
GPU |
52℃ |
70℃ |
ケース内 |
30.9℃ |
31.2℃ |
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結果は残念ながら全てにおいて芳しくない。それぞれベストスコアを見比べると、アイドル時ではCPU33℃→36℃(+3℃)、GPU49℃→52℃(+3℃)、ケース内28.8℃→30.9℃(+2.1℃)、高負荷時ではCPU50℃→52℃(+2℃)、GPU68℃→70℃(+2℃)、ケース29.2℃→31.1℃(+1.9℃)と、いずれもデフォルトのファンレイアウトがイレギュラーを勝る結果となった。
このテストにより、エアフロー方向は変更しない方がよいという事が分かった。つまり、トップフロント側排気ファンが吸気になってたところでそれは微妙な変化であり、システム内での影響は少ないという事が言えるだろう。極端にファンレイアウトを変更する事は無意味であった。
実は読者の投稿には続きがあり、「背面排気を吸気に変更し、排気はトップファンだけに任せるエアフローレイアウトにしたところ、背面ファンのエアフローが直接CPUクーラーに当たるため、冷却効果がある」と言う。
前述通り、この件については別枠を設けて改めて検証するので、そちらで詳しくテストをしてみたい。
|総評 拡張性、冷却性能共に申し分のない良モデル
Antec「DF-85」 エルミタ的総合評価 |
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【静音性】 3ポイント 静音と表裏一体の間柄にあるエアフロー。PCケースに高エアフローを求めるならば、ある程度の犠牲は覚悟しなくてはならない。ただしファン回転数を減速させる、または不要なファンは止めてしまうという選択は残されている。
【組み込み易さ】 5ポイント 実際に組み込みを行った限りでは、問題となる箇所は皆無。
【剛性】 5ポイント スチール素材の良さが味わえる。接合部工作精度も良好で、構成パーツが空の状態でも不安は無い。さすがにそこはAntecだ。
【拡張性】 5ポイント シャドウベイ数はクラス最上位。
【冷却性能】 5ポイント 高エアフローを謳うだけに、ケース内の風の流れは速く、テストでも好成績。
【コストパフォーマンス】 4.5ポイント 本当は5ポイントにしたかったが、ライバルモデルの売価を考慮し、マイナス0.5ポイント。実売価格18,000円台(もしくは以下)であれば、ライバル他社の脅威に。 |
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「速攻撮って出し」ではない視点からの「一点突破」PCケース編。率直な感想を言うと、Antec「DF-85」は第1回に相応しい良いケースであった。
さすがに現代的な設計がそこかしこにちりばめられ、近年Antecが提唱する(あるいはシフトした)高エアフローゲーミングPCケースとして、見事に仕上げられていた。
欲を言えばきりがないが、全体デザインを崩してでも、もう少し奥行きがあればと感じる人もいるだろう。電源ユニット搭載底面に吸気スリットも用意して欲しいと思うかもしれない。前者は少々大掛かりだが、後者は簡単にできてしまうため、派生型新モデルでは是非検討して頂きたいと思う。
また一通の読者投稿からまきおこった(?)トップ排気ファンの“吸気化”については、今後も要検証の課題となった。ひとつ言えるのは、同様のエアフローレイアウトを採用したPCケースであれば、条件が整うことで十分に起こり得るという事だ。なにも「DF-85」に限った事ではない。
試しに行ったフロント側トップ排気ファンを吸気にした実験で、その効果が無い事は分かった。微弱ながら吸気側にエアフローが変わった事実から、フロント側トップ排気ファンはその役割を果たせていない(または意味がない)のかもしれない。もしかすると、この位置にレイアウトされた排気ファンの存在意義にも関わる問題に発展する可能性すらある。(少々大げさに言うならば)「一点突破 ケース編」第1回目から、大きな宿題を背負ってしまったような気がしてならない。
【エルミタ的検証用PCケース募集】
エルミタ的「一点突破」では検証希望PCケースを募集しています。国内外を問わず、ご興味のあるメーカー様・代理店様は編集部までご一報ください。 |
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機材協力:株式会社リンクスインターナショナル
GDM Corporation All Rights Reserved
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